自力まとめ13 ヒサヤとオミ。   2012/10/19 19:15

灯りの消えた廊下を走る。僅かに聞こえる諍いの声を頼りにただ一路、主のもとへ。
夢中で飛び出した勢いのままに主を突き飛ばす。
どうやら間一髪自分は間に合ったようだ。
敵の興味は既に主から反れた。大丈夫だ。
あなたはここで、こんな所で終わる人間ではない。
我が親愛なる主殿は、こんな所にいるべき人物ではないのだ。


ああ、どうか。生涯の忠誠を誓いながら、此処までしか御供できない俺をどうか許してください。

俺を狂っているとJ部隊の元リーダーは言ったけど、きっと絶望などした事がない彼には解らない。
敬愛する主人が何もかもを失い堕ちていく様を為すすべなく見ている事しかできない己の無力さなど。
生きる為に復讐に、狂気に、縋らなければならないなど、希望の塊のような彼は知りもしないに違いない。


大いなる力の前で個人など無力だった。
全ては「予定通り」だった。
何も知らず何も持っていないただの使用人に過ぎない俺に、どうやって彼を救う事ができただろうか。
生きていく為に自ら光に背を向けた主を。
どうすれば良かったんだろうか。
彼なら光になれたんだろうか。
俺にはできなかった。
だから狂気の道を往くのなら何処までも一緒に、と。


俺は間違っていましたか?
困難な道を往く貴方の、僅かでも支えになれていたでしょうか?
本当は他に方法があったのでしょうか?
思い至らず不甲斐ない従者で申し訳ありませんでした。
貴方に仕えられた俺は幸運でした。
貴方より素晴らしい主人なんか何処を探したっていない。
貴方と共に過ごした人生は、最高の人生でした。



ただ、いつか爵位を継ぎこの国の未来を造る貴方の姿を、貴方が造るこの国の未来を、この目で見られないのが残念でならない。









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ごめん、ごめん、ごめん、巻き込んで、本当にごめん。
俺なんかに付いてこなくて良かったのに。
さっさと見捨ててどこか遠くで真っ当な人生を歩めば良かったのに。
独りじゃ淋しいといつか言った通り、優しさに甘えて離れられなくて、結局俺のせいで殺してしまった。

こんな事ならもっと早く追い出してしまえば良かったんだ。
本当に独りになる前に、追い出してしまえば良かったんだ。




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