自力まとめ11 アラタの愚痴 アラタ視点   2012/10/13 08:57

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僕の母親は大人になりきれないいつまでも少女のような人だった。いつも誰かにすがって独りでは生きていけない人だった。恋人ができると有頂天で夢中になって、恋人と別れると僕を抱き締めて泣いた。ずっと一緒に居てね。置いていかないでね。僕はその度に母親の背を撫でて大丈夫だよと言った。

僕も母さんがいないと生きていけないんだ。ねえ、泣かないで。僕はいつも母さんに笑いかけるよ。怒らないで。笑ってる母さんが好きだよ。ねえ、だけど。新しい恋人ができたら僕の事はまた忘れるんでしょう?それでも僕は笑っているよ。僕は僕を守る為に。

結局女である事を優先する、母親としては最低の、人間としてもろくでもない部類だったと思う。包丁を握り締めて蹲る僕に、遠縁にあたるらしい青年は言った「家族になるんだ」って。彼の言う家族が何なのか僕にはよく解らなかった。僕に危害を加えない。それが判ればどうでも良かった。

「もう誰もお前に暴力を振るわない」彼は言った。だから安心して良い、と。やっぱり彼の言う事は解らない。母さんが居ないのにどうして安心できるの?母さんがあいつに殴られてるかもしれないのに。僕は、僕と母さんをあいつから守らなきゃいけないんだ。母さんには僕しかいないんだ。

ねえ、解る?僕の家族は母さんだけだったんだよ?僕を守ってくれる人も、僕が守らなきゃいけない人も母さんだけだったんだよ?家族になる?ふざけないで。だったら、そんな事いうなら、どうしてもっと早く助けに来てくれなかったんだ!母さんはもう笑わなくなっちゃったんだよ!

完全な八つ当たりだ。そういう僕を彼は辛そうな顔で抱き締めた。こんな時に言わなきゃいけない言葉は知っている。大丈夫だよ泣かないで。笑ってそう言えば良かったのに彼にはこの言葉は不正解だったらしい。余計に辛そうな顔をされた。誰もお前を責めたりしないよ。そう言われても意味が解らなかった。

今にして思えばあの時彼は僕が母さんを刺したと思ってた。おかしいよね。誰よりも守らなきゃいけない人をどうして刺したなんて思んだろう。遠縁だけど僕らの事を事件まで知らなかったから仕方ないかな?もしかしたら今でも僕が刺したと思ってるかも。ねえ、タマキちゃんは僕の事を信じてくれるでしょ?






狂気の一歩手前くらいのアラタ!



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