ガチャリ

家に入ると壁に手をついて体を支えて、パンプスを脱ぐ

「んー、むくんだかなぁ」

バラバラ、と適当にパンプスを散らかしてそのまま脱衣場に行き
手を洗ってストッキングを脱ぎネットに入れ、朝に時間設定をかけてだいたい30分前くらいに終わった洗濯機をあける………も

昨日確かに洗濯したはずのストッキングが入ったネットは見当たらない。ショーツやブラは値段が高いと前に怒ったからちゃんと無事だ


だけどまぁ、いくらいつ電線するかわからないとは言え毎日ストッキングを抜かれたら御財布に非常に優しくない。
だってOLは毎日使うし


「ヤナ、ストッキング抜いても良いけど新しいの買い足しといてよー」


とりあえず干すものを回収して、玄関を通りリビングへ向かう
道中、玄関でちらっとパンプスを見るとパンプスはきっちりと並べられていた

やはりもう居るのか

そのままベランダで洗濯物を干し、下着などは部屋の中に干す
迂闊に下着ドロなんか現れたら犯人が殺されかねないからね

その後も毎日繰り返してる家のことをやり
ホームウェアに着替える頃には8時を過ぎて居てすっかり空腹だった


昨日作った唐揚げを冷蔵庫から出してチン

朝にタイマーで炊いたご飯をよそって
下らないテレビをBGMに携帯をカチャカチャいじりながら晩御飯を食べる


と、そのとき



しゅるるるる、とテーブルの上に蛇が現れた


「なに?ヤナも食べたい?」


携帯を置いてヤナを見ると、蛇は肯定するかのように頭を振った
仕方がないから小さめの唐揚げを一つとり、差し出すと蛇は唐揚げを丸のみにした


……………味わえよなー、もう


細長い体がアンバランスに唐揚げの塊ぶん膨らんだのを見届けながら再び携帯を手にとる



と、ボトリと机の上から私の足の上に蛇が落ちてきた


「なに?」

首をかしげてもヤナは何も言わず
そのまま私の体を這い登って首に巻き付いた


ひんやりとしたヤナが首に巻き付くとそれだけで寒くなる。しかも首を閉められる本能的な恐れも沸いてくる

ぶっちゃけ気分は良くないから手を差し出すとヤナはしゅるしゅると私の手に巻き付いた


そこでようやく、しっかりと蛇と目が合う



『愛しています、朧──……』



キィ…ン、
僅かな耳鳴りと共に聞こえたヤナの熱っぽい声

けれど毎度言われてる言葉にときめくことも無く、ただ淡々と蛇を見返す


「やだよ?ヤナのセックス長いんだもん。明日も仕事だから今日はヤらない」

『……もっと、側に……』

「側?別に寄れば良いじゃない。ただし首は寒気がするから嫌だよ」


瞬きをした間に、私の腕に巻き付いた感触は消えて
視線で彼を探す前に、ふわりと体が浮いたと思ったらヤナの膝の上に座らされた


「朧…好きです…全てを愛してます」



後ろから耳元で囁かれる、熱い吐息を伴った思い


「あぁ、そうですか」


私は今日もそれを携帯を弄りながらやり過ごした






落ち込むヤナは知らない
私の目が、獲物を狙うように瞳孔が開いていたことを






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