「美味い?」


もぐもぐと水羊羹を食べて
にこにこと笑いながら言う課長に頭をコクコクと振ることで反応を返す


と、そのとき

「すまちゃんは容量が悪いよねー」


後ろから私の首に手を回され、私の頭を抱きしめられた
頭の上にのるずっしりとした柔らかな重量感……間違えない


「朧さん!!遅刻ですよ!!」


ばっと振り払いながら振り向くと、朧さんは豊満な胸を私の頭からどかして離れてくれた

………会社支給の制服のボタンを止めるのもいっぱいいっぱいの胸。…………ちょっとだけ羨ましい

「いやさぁ、痴漢にあってる子を助けたらうちのストーカーが激怒して厄介なことになっちゃって」

「………僕の朧が野郎に抱きつかれていたら、さすがに許せませんよ」


話の途中で、朧さんより遅れて入ってきた城柳さんはそのまま朧さんの席を見て


ふっつーに彼女の昨日飲み残したペットボトルを自分の鞄にしまった。………普段は優しくてちょっとへたれ気味な城柳さんは朧さんが絡むと正直気持ち悪い


「あはは、すまちゃんあれくらいで気にしないの。今回は相手に呪いかけなかったから良いよ。それよりもさ、『校長室の美少女フィギュア』は、夜中に歌を歌いながら徘徊していて、捕まると死ぬまで歌に付き合わされるとか、『放課後になると現れるモンスターペアレントおばさん』は苦情を言いに来る途中で事故にあって……今でも鬼の形相で苦情を言う相手を探してる。とか、色々とやりようはあるんじゃない?」


「いやでも、実話じゃ無いし……」


確かにそれなら七不思議っぽいと思うものの、そこまであからさまな捏造はためらう
課長にいつも七不思議を作ってもらってなにを今更って感じではあるが

渋る私が右手に持っていた羊羮をぱくっと食べてから
悪戯っ子みたいな笑顔で彼女は楽しそうに笑った


「七不思議なんか所詮噂話の集合体だから、話はねじ曲がって当たり前だよ。とりあえず課長が改造した噂をばらまいて、城柳が適当にそれっぽく何日か演じれば七不思議確定で承認になるんじゃない?」

「まぁ離れていても盗聴器があるから良いですが」

「それが出来たらすまちゃんが情報を持ってきよったから、すまちゃんのお手柄やなぁ。おめでとうすまちゃん」


古だぬきのような朧さん
朧さんに絶対服従なストーカーの城柳さん


さらに課長まで集まり

私の集めた話は結局そのまま本採用にまで持っていかれた


株式会社★七不思議〜本社〜
何があっても動じない先輩たち……狼女と蛇



「そうだかっちょー!!明後日お休み頂戴よ」

「ん?どしたん?」

「弟の彼女がめっちゃ可愛いらしいから襲撃しようかと。ほら近所の七不思議の太郎君やってるから休まないと逢えないんだよね」

「朧を休ませると、城柳まで休むのがなぁ」

「彼女を一人にしてはおけませんから」

「んふっふー!!二口女かー、美味しいのかなぁ、可愛いのかなぁ、食べちゃっても良いのかなー」

「まぁ俺じゃ朧も城柳も止められへんがな」





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