「ねぇねぇ、知ってる?この学校の七不思議………」
ぎょろり
耳に入った子供の声に、喜んで目を遠くに飛ばしその場所の頭上へと飛ぶ
「なにそれ!!」
「あのね………」
小学生の少女等に気づかれぬよう
“ソレ”は耳を済ませて、少女等の頭上で七不思議を聞いていた─────
株式会社★七不思議〜本社〜
「ああああもう!!なんで最近の子はこんなにオカルト離れしてるのよー!!」
一応はあの子らの七不思議も資料として纏めはしたものの、そんなことに妖怪を派遣なんか出来ない。とてもじゃないけれどお門違い過ぎる噂話しだった
「すまちゃん、気持ちはわかるけどあんま荒れるのはよくないでー」
へにゃへにゃ笑う上司にお茶を貰い、ぐびっと飲んでからカンッとデスクに叩きつける
冷たいお茶はとても美味しかったがそれくらいじゃ私の体を燃えたぎらせる捨て場の無い怒りは消せなかった
「だいたい校長室の金庫に美少女フィギュアがあるば、どないもんを送ればいうんか!!妖怪なんだっでんよか言うけ、だっでん送れんやないけ!!」
「すまちゃーん、方言キツすぎて俺には理解出来んよー」
ムキーーー!! と叫ぶとへにゃへにゃ上司は頭を撫でてくれて、なんだか毒気を抜かれた
いつもそうだ
私がカッとなると上司……課長がのほほんとして私のかんしゃくを中和してくれる。正直、めさくさありがたい
「まぁでもこれは酷いねぇ。『校長室の美少女フィギュア』に『放課後になると現れるモンスターペアレントおばさん』、さらに『トイレの女神様』って……」
「そぎゃんたい!そぎゃんこつあ、七不思議やねんちゃせんほうがよか!!そぎゃん、あん部長ば支部を増やせっちゃ言うばい!!」
「あー、熊本の方言の字引買わないとすまちゃんが何言ってるのかわからんなぁ。ほら、とりあえず息吸ってー。はい、吐いてー」
ついまた興奮してもうて、めちゃめちゃ訛りが全開になると課長に立たされて深呼吸をさせられる
すー、はー、と体の中に深く酸素を取り込むと
怒りの矛先は怪談離れをした子供たちから無茶ぶりをする部長へと飛んだ
「だいたい少子高齢化の昨今、月に一社も支部を作れとか無理なんですよ。そんなに七不思議があって支部が無い場所なんか簡単に見つかりませんよ」
「せやなー、ほい、すまちゃんの好きな水羊羹やで」
「油すましが噂にまつわる妖怪だからって、もぐもぐ、そんな都合良く噂を拾えるわけが、もぐもぐ、なかばい」
「まぁ、ノルマがヤバくなったら俺がまた七不思議でも作るから、すまちゃんはそう悩まんでや」
はっと気がつけば、右手には水羊羹を食べるつま
左には冷たい緑茶の入ったコップがあり
仕事中で仕事場やのに、当たり前のように寛いでしまった……!!
「ん?」
にこにこ笑いながら首を傾げる課長をじと目で見ながら
しっかりしないと、と思う反面
ぬらりひょんって怖いなと思った
ここまでリラックスさせるなんて…しかも「すまちゃん、ほい、お茶のお代わりやで」「あ、ごっつおになります」頑張って覚えた標準語を破壊されるなんて………
株式会社★七不思議〜本社〜
営業課課長は人を油断させるのが得意なぬらりひょん
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