「うぐぬぅぅぅぅ、シーザーさまーシーザーさまー」

「りこ末期っぽいねー」

「シーザーさまああああ」


はしたないなんて気にせず
執務室に置かれた私の机に伏せて潰れたカエルみたいな唸り声をあげる

シーザー様はいない
地位も持ってる教会のお偉いさんに呼び出されて、私を教会に寄越しなさいと語られてしまっているらしい


申し訳無くて申し訳無くて、さらに着いて行けないのが悔しい

この場所でどんなに唸ったって、俯せたって
帰ってくるのは冷たい机とアレクの笑い声だけなのにー


「まぁあれだよ。最終的にヤバくなったら俺の戸籍を貸してあげるさー」

「戸籍?」

よくわからないアレクの言葉にきょとりとしながら体を起こして、乱れた髪を整えながら先を促すと

アレクは実に名案を語った

「結婚しちゃえばさー、穢れたってことで神の子になるのは無理なんじゃないかなー。まさかシーザーの戸籍を借りる訳にはいかないしさー」


ふむ。それは良い名案だ
シーザー様以外を愛してはいないが、アレクは大切な仲間で一緒にいても苦じゃない

さらには私がシーザー様第一主義なように彼もシーザー様第一主義だから、揉め事も無さそうだ


それに……シーザー様と婚姻を結ぶなんて、恐れ多い…… でも離れたくない。お側にいたい

「ありだね」

「でしょー」

「じゃあパパっと籍を入れようか」

「入れちゃおっかー」


ぐっ、とアレクにポーズを決めると
アレクからもポーズが帰ってきて


わーい問題解決ーと二人ではしゃいでいると、私たちの主人が帰ってきた



「リコリス」

「シーザー様!!お帰りなさい!!」

「シーザーおかえりー」


扉の空く音が聞こえなかったけど全く気にしない
そのまま満面の笑顔で駆け寄り、外套を受け取ろうとしたのに

シーザー様は何故か表情を強張らせて私を見るばかりだった

「……」

「どうか、いたしましたか?」


彼の側にいられるだけで良い
この身も力も全ては彼に使われるためにある、私は彼の神聖魔法を使える便利な駒だった

駒だったとわかっていたはずなのに、








「お前は明日から教会に行け。ここにはもう来るな」




ぽいっと簡単に捨てられて
足元から崩れるような感覚に陥った







そうだよね
たかが駒一つのために貴重なシーザー様の時間を煩わせたりして、迷惑だったよね

嫌だけど
それ以上に迷惑をかけて申し訳ない気持ちがまさり



「かし、こまりました……」


私は泣きそうなのを堪えて震える声で跪いた



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