「妃!!おいどうした!?」
「キャアア、王妃様っ!?」
倒れたのはホールの端の王族の席に座っていた王妃様らしく、一気にホール全体が混乱に陥った
私はそんななか、一度だけシーザー様を見ると軽く首を振られたから治療の必要は無いと判断して他の淑女のように心配そうな視線を人だかりに向ける
「医師、なんとかならんのか!?」
「使われた毒がわからんと、なんとも……」
「教会へ誰か使いを!!神聖魔法の使い手を送ってもらえ!!」
嫌な予感はしたんだ。視界に入ったアルテミさんがこちらをむいて嫌ーな笑いをしたから
ターゲットの前でこんな恥をかかされて、復讐しないタイプには見えなかったし……
「そういえば!!ガイス様のところの姫君は聖女のような素晴らしい魔法を使うと聞いたことがありますわ!!」
アルテミさんの一言でホールの人がいっせいにこちらを見て
その視線の逃げ場のなさに、困りシーザー様にすがりつく
明らかに嫌な反応をしているのに、王様は気づかずにこちらに向かってきた
「おい!!そなた、神聖魔法が使えるのか!?気休めでも良い、妃を治療してくれ!!」
「きゃっ、」
強引に手を引かれシーザー様から引き離されると
後ろから「治してさしあげろ」ってシーザー様の声が聞こえたから、それまでとは一変してやる気がみなぎってきた!!
「さぁ頼む!!」
「……かしこまりました」
顔色悪く苦しげな王妃様の元に連れてこられ、視線の集中放火をあびながら
一度、パチンと指を鳴らした
私はシーザー様に気に入られたい一心で少人数のトータルヒーリングならば詠唱破棄が出来るようになっていたから
これだけで良い。それだけで、王妃様は一瞬で顔色がよくなりきょとりとしながら起き上がった
それだけのはずだった。それだけのはずだったのに
王宮で目立つ形で、教会の人々も簡単に出来ないような神聖魔法を披露した私は
その日から聖女として無駄に崇められて、新聞の一面にも勝手に書かれて
毎日毎日、教会の信者や偉い人たちが在るべき場所に参りましょうと下らない信仰の世界へ引きずり込もうと屋敷に現れるようになった
一番の問題は、神聖魔法に感動した国王がそれを煽り
問題は日に日に大きくなり
私はシーザー様とともに仕事で外出が出来なくなって行ったことだ
帰