力が強くなっても
体が成長をしても
私は盲目的にシーザー様を崇拝し

あれから数年がたった今でも、私はシーザー様の隣に居る


傷んでボロボロだった赤い髪は綺麗な艶を見せ、それを高いところで結って控えめなピンクのルージュを引く


シーザー様は化粧臭いのが嫌いだから、私がする化粧はルージュだけだ。それでも彼の隣にいて見劣りしないように必死に体も心も力も磨いた


ピンクと白の可愛らしいドレスは、ふっくらと丸みを帯びた私の体をつつむ
可愛らしいけれど、胸ぐりががっつりと空いているので色気も出てる……と思いたい


最後におとぎ話のような真っ赤なヒールに足を入れ


背筋をピンっと立てて立ち上がり、姿見で全身のバランスを見る。うん、大丈夫

コンコン


さっきからドアを勝手に開けて覗いていたくせに、今更ノックをしたアレクに苦笑はしても文句は言わない。だって言っても無駄だし

「お迎えですよ、お嬢様?」

「こんな私でもお嬢様みたいに見えるかな?」

「見える見える。いやー、良い女になったよなー」

差し出された手を取ると、昔と変わらずにイタズラ染みた笑いを向けられる
シーザーのコレクションじゃなかったら食ってるよ、なんて言うアレクはめちゃめちゃ女ったらしだ

私は女のターゲットは上手く情報を引き出せないから、素直に羨ましいと思う


そのまま玄関ホールまで連れて行かれると、そこにはオルと大好きなシーザー様がいた



今すぐに駆け寄り飛び付きたかったが、大人が履くヒールはそんなことをするためにあるんじゃない
だからアレクに手を引いて貰いながらしずしずと近づいて、にっこりと微笑む

「お嬢様、さぁ外は肌寒いですからね。これをどうぞ」

「ありがとうオル、行ってきます」

オルにショールをかけてもらい、そのまま背を伸ばして彼の頬に親愛のキスをする

「行ってらっしゃいませ」

初めてあったときと変わらない、優しい笑みを貰うと
アレクと手を離し、背を向けて歩き出したシーザー様に続いて歩き出す


無言ではあるけれど、その歩みは私に合わせてゆったりとしたものであることを私は知っている

私の服装について何も言わないのは、シーザー様が照れているからなのも知っている



大好きなんだ。凄く凄くシーザー様が、大好きなんだ


「………惜しいな」

「どうかしましたか?」

馬車の中で対面に座り
私の隣にはアレクがいる
そんななか、シーザー様はぽつりと呟いた



「今日のドレスは特に似合っている。それだけに、汚れるかもしれない所に出向くのは惜しい」


本当にシーザー様が大好きで大好きで
私は毎日が幸せで幸せで仕方がなかった


「でしたらまたこのドレスを作って貰います」

「うっわぁ、リコーでれでれ笑いすぎー」

「だって嬉しいんだもん」



たとえ



パンパンパンっ!!!!

「……交渉は決裂だな。残念だが死ね」

「っ!!も、もう殺してるじゃねーか!!」

「黙りなさい。シーザー様に逆らうことは許しません」


足に力を込めて、瞬発力で男との距離を縮め
右足で彼の胸元に蹴りをいれ、倒れた所をヒールでぐりぐりと踏みつけてその肩を銃で撃ち抜く

「このっ!!悪魔が!!」

「黙れと言ったでしょう?」

コメカミぎりぎりを撃ち、バカな男を黙らす。

本当にこの男も、この男のボスもバカだ。シーザー様に逆らうなんてどうかしてる


バカすぎるせいで、せっかくシーザー様が褒めてくれたドレスも帰り血だらけだ

「そいつは持ってかえって見せしめる。アレク、拘束しろ」

「かしこまりましたー」


たとえ、この生活がたくさんの人を殺して出来たものであっても

私は、確かに幸せだった







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