やばい。ヤバいヤバい
「あははははは!!!!!!!」
「……志岐、人の目を考えなさい」
「う、うん………ぷっ」
こらえたのも一瞬で、結局私は涼を見て爆笑しちゃう
いや、だって、だってさ?
「あはははは!!涼、ヤバい似合わないから!!」
「……貴女が合わせたんでしょう」
すっごい不機嫌マネキンになった涼
その体にはキャラクターもののTシャツが当てられていた。当てたの私だけど
出来心でした。素直に
だがしかしここまで似合わないと最早爆笑ものですよ
「だいたいこんなものは子供が着るものであって、大人が着るものじゃ無いんですよ」
ぶつぶつと文句を言いながらシャツを戻す涼を見ながら涙をぬぐい
その近くにあったレディースのキャラクターシャツを手にとる
「そんなことないよー。ほら、このシャツに短パンにサングラスとか合うじゃん」
「露出しすぎです」
「お堅いなー」
とは言いつつも、せっかくなのでちゃんとした男性向けのシャツも選んであげる
黒いシャツに大柄なクロスの模様。それと茶色のズボンに、型抜きタイプの帽子を被せてあげれば涼はぐんっと若返った
………いや、今までが老けてただけか
「んー、んー、75点ってとこかなぁ。本当ならもっと何件も回って90点以上のコーディネートを選びたいところなんだけど」
若返ったけれど、げんなりしていた
まぁ仕方がない。この店で涼の服選びは三件目だから
整った顔と隙がない仕草の涼に似合うものは中々見つからなくて困った。それこそ老けて見えてもいつも着てるスーツが似合うと思うほどに
「勘弁してください…」
まぁ老けてるって言っても、熟成された男前に見えるだけで決して白髪とかある訳じゃないんだけどね
「ま、今回は見逃してあげるよ。ところでデートって何処に行くの?」
服装とかを弄らせてくれたら、デートしてあげるって約束だ。ここから先は涼の采配にかかっている
まぁ、
多少は期待してたんだけど。
私はもうぜってぇ涼とはデートしないって決めた。
「絵画展に行って、ロマプリーヌホテルのレストランに行く予定ですが」
ロマプリーヌのレストランはまぁ良い。けれど、絵画展なんか私の柄じゃない
ま、涼が好きな作者なのかなとそこは我慢することにした
とりあえず、私の行きたい場所を考えて絵画展にしたんなら殺意が沸くけど
とか、思ってたんだけどさ………───
「あれ、ここ…」
「はい、チケットです」
小さくも大きくもない絵画展。その絵画展の作者の名前には見覚えがありすぎた
『添島さなぎ個人展』
その個人展は行きたくて仕方がないけど上手くフリーの休みが取れなくて諦めていた個人展で……
「……いつ、来たいって知ったの?」
たまたまな訳が無い。そういえば涼は一応は敏腕執事だった
「先日電話で、行けないと謝罪していたから行きたいのかと思ったんですが。嫌でしたか?」
優しく笑いながら聞くのはずるいと思う。
わかりきってるのに聞くのもずるいと思う
ほっんと、ずるい男って嫌だ
「………別に」
帽子を手で押さえて
目深に株って赤い顔を隠すけど
そんな私のことはわかりきっているとばかりにくすくす笑われながら、背中に手を当てられ自然な仕草でエスコートをされる
本当、ずるい男
一つ一つの絵をゆっくり見て
言葉もなく絵に見惚れる
私は絵に興味は無いが、それてもここに並ぶ絵は凄く綺麗で惹かれた
小さい頃から芸術に触れる機会があった涼ならもっと違う感性で見れるのかもしれない。けれど涼の表情からそれはそう悪くないものだとわかって、なんだか嬉しい気分になった
身内を褒められるのは悪くないしね
「あれ、ねーちゃん?来れないんじゃ無かったのかよ」
「むっちいいい!!」
「いっでぇ!!」
奥に行くと姿を現した弟に抱きつこうとすると、軽く手で制されたから
弁慶の泣き所を尖ったヒールで蹴り飛ばして怯んだ隙に抱きしめる
「……志岐」
大きくなった弟の体を堪能するが、それは涼の制止と奥から現れた目をまんまるくさせた少女により終了を告げることになった
パクパクと少女が口を動かすと一気に不満そうな顔になる弟。二人の世界は止めて欲しいな、うん
「なんでだよ。お前が俺の彼女だろ。これは姉貴だよ姉貴。姉貴、これがもうちょいで義理の妹になるさなぎ」
むっさんも大きくなっちゃって
ほろりとしながらも、さすが姉弟。良い趣味してると思うよ
さなぎちゃんは電話で聞いた通り喋れないみたいだけど仕草とか行動とか見た目とかで私好みなのはわかった
「志岐です。いつもうちの愚弟がお世話になってます」
ふるふると首を振るさなぎちゃんの小動物感は半端無い
抱くべきか
抱かざるべきか
それが最大の問題だ
そんな私の苦悩は、むっさんにより笑いの渦へと落とされた
「あれねーちゃん、もう男変えたの?相変わらず一人に落ち着かねぇなぁ」
帰