「どうしよう」



可愛い服も捨てがたい。けれど体格的には大人っぽいのがいいのか


あぁでも胸を出したりすると余計な虫がたかるって父さんが言ってた

でもアーリィさんは勝負所なら見せろって言ってた


親族の意見を頭の中でぐるぐる回しつつ、たくさん並んだ服を一着一着吟味する
迷う。カイジュさんのタイプってどんなんだろうか

あれだな、露出の酷い服ならカイジュさん真っ赤になって可愛いかもしれない


「お困りですか?」
「結構です」

近づいてきた店員の方を振り向くこと無く一蹴し、良いものを探す


買い物は嫌いじゃないけど
こういう話しかけて来る人がいるから嫌いだ


装備なんかの性能の話ならともかく衣料服の店での話なんか自分の趣味の押し付けにしか感じられない

そもそもにおいて、私は余計な馴れ合いなんか嫌いだし
自分の時間を邪魔されたくない。邪魔して良いのは極少数の人間だ…………

「あ……」


ちょっとイライラしながら見てるとき目についた一着
それは私の目を引いて……………一発で気に入った。これにしよう








「カイジュさんっ!!」

お祭り当日
町外れの馬車の乗合場所に立っていたラフな格好のカイジュさんに、後ろから抱きつく

そうすればアタフタと慌て出すカイジュさんが可愛くて可愛くてさらにぎゅーっと力を込めた


「じ、ジゼルさん!!」

「お待たせしました」

さすがにやりすぎは良くないから、名前を呼ばれれば離れてにっこりと見上げる

目が合うなりポカーンと赤くなりながらまぬけな表情をした彼に、服装は変だったのかな?と焦るが

「ぁ……ぅ、…いき、ましょう、か…」

どもりながらこちらを見ないし
耳は真っ赤だし

た、たぶん、悪い反応じゃないのかな?
そんなことを察しながらもやっぱり「可愛い」って言われたかったなと内心落胆した




それでも


「どうぞ」

目的地の村までの馬車に乗るときには手を貸してくれて

「あ、これどうぞ」

他のお客はいないらしく二人っきりで
ガタゴト揺れる馬車の木の座るところで少しだけお尻が痛いなって思ったら、上着を脱いで服の上に座りなさいって貸してくれた


「……ありがとうございます」

それでも上着の上に座るなんて出来なくて
差し出された上着をぎゅっと抱きしめる

「……それの上に、座ってくれないと…可愛い、服が汚れてしまいますよ」


可愛いって、言われた!!
咄嗟にばっと反応すると、やっぱりカイジュさんは赤いまま視線を全力で逸らしていた

どうしよう。これはもうどうしたら良いんだろう
カイジュさんと居るといつも以上に甘えたい気分になる


好き、好き、好きが溢れる

「カイジュさん」

「はい?」


くいっと服を引いて彼の意思をこちらに向ける
じーっと真剣に見つめながら
とりあえず欲望のままにお願いをしてみた

「あの、ものすごい引っ付いてベタベタしたいんですが」

「ぶはっ!!!」


噴き出したあとにぎょっとしながら見つめる彼を、真面目に見返す
キョロキョロと視線をさ迷わす彼を、真剣に見返す


じーっとじーっとじーっとじーっと見つめる


しばらく無言の攻防をすれば、真っ赤なままカイジュさんがうなだれた


「着くまでですからね」


そして開かれた手に、私は大喜びで飛び込み抱き着いた





『可愛いって言われたいの』








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