自転車で信号待ちをしていると隣に並んだバス
ちらっとそちらを見ると、そこにはいつぞやの彼が携帯を見ていた
『あの、』
『ふぁっ、は、はい!!』
『………寝てて、大丈夫?』
『え!!ここどこ!?ああああああっ!!』
くすくすと笑いながら彼が告げた次に止まる場所の名前は、私が降りる一つ後の停留所で
起こされて恥ずかしくて、顔が凄く熱くなりながらボソボソと御礼をのべると彼はやはり笑いながら私の頭を撫でた
その大きな掌に
優しげな笑顔に
当たり前だが、低い声に
……まるで漫画みたいな素敵な出逢いに
彼を意識するようになった。
けれど、雨はそうそう降らない
私はいつも自転車からこちらに気付かない彼を見上げるだけ
お願い、気がついてと願いながら見上げるだけ
そして今日も彼は私に気がつかないままバスに揺られて行ってしまった
「………はぁ」
現実は物語と違って甘くないか
溜め息をつきながら私も、いつも通り自転車を漕ぎ出す
とりあえず
早くもう一度彼と話してみたいから
学校についたら、逆てるてる坊主でも作ろうかななんて思えた
今日も太陽は明るい陽射しを振り撒いている───………
帰