「リィヤ……好きな人、出来たかも」

「…………………あ゛?」


ほくほくと笑いながら、上機嫌でこれから貼りに行く結界の場所と形状、目的を確認する


いつもなら一つ終わる毎に城に戻ってきていたが、今日は戻らずに三つは終わらせたいからみっちり頭に叩き込む

明後日には仕事を終わらせて、明明後日はお買い物に行くんだ


「………悪い、ジゼルちょっと水鏡で連絡しなきゃいけないことが出来た」

「ん?あぁ、わかったー。じゃあ勝手に行くから」

「ん、気を付けろよ?」

顔をひきつらせたリィヤは私の頭を撫でると出ていった
リィヤのことだから突っ込んでくると思ったんだけどどうしたんだろうな…………






─────────


大変、気まずい


『ジゼルが朝っぱらから人間の国の土産を持って帰って来た……』


「それがどうしたんだ?ってか来るんなら報告してくれないと俺、逢いに行けないじゃないか」


『しらばっくれるな。ジゼルが朝帰りをしてあまつさえ、あまつ、さえ、す、すすすすああああ!!!お前、うちのジゼルを傷物にしたんじゃねぇだろうなぁ……』


「はぁ!?俺は知らねぇぞ!!」


『しらばっくれるな!!手が早くても口が悪くてもその辺誠実な奴だと思っていたが……』

何故か誤解をしているリィヤ。真相を知る身としてはいろいろとあれなんだが

とりあえず、予想外にリィヤもめちゃめちゃシスコンなんじゃないかと驚きを隠せない


リィヤはいつも落ち着いていて冷静で、穏和だと思っていたが………


「つか、待てよ。傷物になったとして、ジゼルは泣いてたのか?」

『お前が呼び捨てにするな!!悔しいことに笑ってたよ!!』

「あ、ならお前離れしたんじゃねぇの?」

『…………いやでも、ジゼルは昔から人前じゃ絶対に泣かないし』

「離れたんなら結婚出来るじゃねぇか!!じゃあ式の準備はしておくから、お前は報告しとけよ」

『は!?ちょ、ま──ぶちっ──』


本当に気まずい
一見にこやかなカイスターンは、その実もの凄く機嫌が悪い

無茶ぶりで通信をぶったぎると、机の上に足を投げ出したほどには機嫌が最悪だ



「あんだけ俺のアピールしときゃ、馬鹿なことをする奴もいないと思ったが……しかも、人間、だ?ふざけてやがる……」


朝食を食べただけで誤解なんだが
リィヤから始まった誤解の渦はさらに悪化してカイスターンに継がれた


誤解とはとても言い出せないし………カイスターンの本気を見た気がして横恋慕に近い情を覚えてることに罪悪感も感じる


「とりあえず、カイジュ!!近いうちに式あげる準備させとけ!!こうなったらリンとリィヤはさっさとくっつけるぞ」

「…………あぁ」


とりあえず
リィヤと同じ状態になった自分にあきれを感じながらも、俺もいつ報告するかタイミングを見ることにした

─────リィヤには何故ジゼルに言えないんだとか、責めておいて情けない





『情けない』







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