「リィヤ、お土産」
「…………は?へ?」
朝も早くから真面目に仕事をしてるリィヤに包まれた美味しいパンをあげると、速攻で部屋に戻りベッドに転がった
結局カイジュさんと当日より前に逢う約束は出来なかった。でもデートだデート
仕事は、結界の打ち直しが七件に城下町で不穏な動きが一件
あと修理に出していた私の装備は………修復に一月かかるみたいだけどお金を先に払いに行かないと
眠いのに、なんだか興奮して寝付けずに
ころころと寝返りを繰り返す中考えるのはやっぱりお祭りの日のことで
「そうだ、新しい服を買いに行かないと!!」
バッと起き上がって、一応クローゼットの中を確かめるがそこにある服は父さんがくれた可愛らしい服ばかりだ
「あ、ブーツも買おうかな」
近いうちにメイドかアーリィさんに聞いて良いお店を紹介してもらおう
がさごそとアクセサリーのケースを漁る頃には、私の眠気はすっかり飛んでいた
─────…………
「珍しいな、カイジュが遅刻なんて」
「………ちょっとな」
カイスターンの近くのデスクに腰掛け、既に積まれていた書類に手を伸ばす
今は何となく何も考えずに仕事に励みたいのに
…………俺の乳兄弟はそれを許さなかった
「なんだよ、ついにお前にも春が来たのか?」
「……来たら良いんだけどな」
本当、春が来てくれたらと思う
噂の『魔王リィヤの従兄妹のジゼル』はカイスターンに聞くのと全然違いころころ笑ってくれて、素直で素敵で
あっさり惹かれたのに
彼女の行動はリィヤに聞いた通りに甘えただった
抱きついて、擦り寄る彼女に俺はものすごく心臓が破裂しそうだったのに
彼女はまるで猫みたいに無邪気に甘えてきた
嬉しい反面、男として見られていないのが悔しい
しかもあの甘えん坊で可愛らしい仕草をリィヤも見ていると思うと…………胸がムカムカする
「なんだよー、リンちゃんに続いてお前もかよ!!俺も彼女欲しいけど、あの女顔はそれなりなのに性格はすっげぇお高く止まってるからなぁ」
そんなこと、無い
彼女は凄く素直で可愛らしい
カイスターンの意見を訂正したいが、そうすれば何をそんなに仲良くなってるんだと突っ込まれるから言えない
何も言えずに堪えながら書類を片す
「まぁ安心しろって。リンちゃんも俺にとっては可愛い妹みたいなもんだし……ジゼルはさっさと落として、リィヤからひっぺがしてやるから。あいつ、体つきも良いから抱き心地は良さそうだし……心配すんなよお兄ちゃん」
ボキッとペン先が折れた
注意のつもりで押し倒した時笑った彼女、白い首筋に破くのも容易そうなルームウェア
カイスターンがそれを想像したと思ったら殴り飛ばしたくなったが
妹の、リンの恋人の魔王リィヤ
リィヤは結婚も考えてくれているそうだが、そのためにはジゼルの巣立ちと承認が必要と言われ……
カイスターンに相談したのも、俺で
なら俺がジゼルを落としてやるよと言ったカイスターンをリィヤに紹介したのも俺だ
色恋に疎い俺じゃジゼルさんを落とすなんてどれだけかかるかわからないし、妹のためを思うならカイスターンに任せた方が良い
カイスターンも素の性格はあれだがこいつなりにジゼルさんのことは気に入っていて満更でもないみたいだ
邪魔なのは俺だ
それでもふとしたときに、彼女の嬉しそうな笑顔が脳裏に浮かぶ
ついでに今は柔らかな彼女の抱き心地の感触も体に残っている
忘れられない、忘れたくない、忘れないで、もう一度抱き締めたい
歯止めがきかなくなる前に彼女から離れなければならないのに、思いつきで誘った祭りを俺は何よりも楽しみにしている
もし過去に戻れるなら
あの時、カイスターンに相談した俺を本気で殴り殺したいなんて馬鹿なことを思った
『様々な画策』
帰