羨ましい。正直、羨ましい。
俺とあいつ何が違うんだ。顔だって負けたとは思わないし、彼女への愛だって負けない

「……なんだよ、斉藤」


じーーーっと見れば見るほど整ったイケメンをガン見続ければ、水無瀬は困ったように笑いながらこちらを見た

「いや、別に」


と言いながらもやはり水無瀬をガン見する。こんなのなんでも無くないってわかっているが仕方がない


「別にって反応じゃ無いだろ。どうしたんだよ」


昨日、たまたま水無瀬と彼女が歩いてるのを見かけた
指を絡めて繋ぎ、優しく優しく笑う水無瀬は隣にいるすげぇ可愛い娘とちょーラブラブだった

噂の溺愛王子の真相を知った反面、何故俺はああなれないのか心底悩む




「…………あのさ、」




俺だってなちとイチャイチャしたい。見せびらかすほどに


「どうやったら俺となちも水無瀬達みたいなラブラブになれると思う」


そう思って素直に相談したが



「無理じゃないの」



あいつはあっさりばっさり切り捨てた


がくっと項垂れて、机に頬をつけながら無駄にイケメンをぎりぎりと睨むと水無瀬は溜め息をつきながらペンを置いた



「俺とろくは、ずっと昔から依存しあってるし他の全てを切り捨てても良いと思ってる。だけど渡部は依存とかしなそうだし、他者を斬り捨てらんないだろー?」


「そんなん、わかってるよ。でもちょっとだけ羨ましいんだよ」


なちが優しいのはわかってる
その優しさがいろいろな人に与えられてるのもわかってる。だけどもうちょい俺並みになってくれてもさぁ


「俺からしたら、斉藤羨ましいけどねー。毎日ご飯作ってもらって」

「は?」

思わぬ発言に目を丸くすると、水無瀬はどこか遠い目をした
そういえば、こいつなちとたまに料理談義で盛り上がってたっけ


「ろくは料理だけは駄目だからねー。でも作ってるとことかすっごいかわいーし、食べて食べてってわくわくしてるとこもすっごいかわいーんだけど。食べ物じゃないときあるかなぁ」


……………いや、わくわくしてるとか那智には無い行動可愛いじゃん

とは、あまりに真面目な水無瀬の表情で言えなかった



「ま、隣の畑は青いもんだよー?良いじゃんそれでも一応仲良しな恋人なんだから。大切にされてるみたいだし?」


にこっと笑った水無瀬が指差す先には、愛する俺の彼女


「…………そうだな」


理想のラブラブとはちょっと違っても、俺たちはちゃんと付き合ってるし

あまり羨んでばかりじゃなくて、とりあえず今を満喫しようと思った








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