どことなく雰囲気をかもしだす、俺の幼なじみ


話しかけられれば誰にでもおっとりと笑い返すくせに、相手に悟られないようにさりげなく人を拒み一人を好む彼女


その柔らかな空気が、好きだった
他の女子とは違い金切り声を出したりも、馬鹿笑いや慌てたりもしないおっとりとマイペースを貫く彼女が好きだった



好きだった。いや、今でもこれからも好きだ



けれど彼女の考えてることは俺には全く読めない



俺が彼女のマイペースを崩しても拒まないのは
俺が特別だからか?それとも近くに居すぎて家族になっているからか?






『付き合おう』
それすらも拒まなかったのは、少なからず俺を思ってくれてるからか……───?











「………」

まなと付き合い出したものの今までよりも少し遊ぶ時間が増えた程度で

俺もまなもべらべら回りに喋るタイプじゃないから誰にも付き合っていると気付かれないまま、ひっそりと仲を深めていたある日


「だから、好きなのっ」


副会長に告白された
とは言え微塵も嬉しくない
それどころかこれからの仕事がやりにくくなるから止めてくれと思った俺は最低だ


頬を染めて
あたりに目を逸らしながらも最終的にねだるように見上げてくる副会長は、正直可愛いと思うけど


「悪い、彼女いるから」


全くもって仕事以外で一緒にいたいと思わない
むしろまなをいくら呼んでも、生徒会室で放課後を過ごさなかった理由はこれかと思う


あいつは心の機微にはさといから
きっと副会長に気を使ったんだ


「…………それって、あの幼なじみちゃん?」

「あぁ」

「っ、付き合って無いって言ってたじゃない!?あの子とはただの幼なじみだって、っ」

「最近、ようやく付き合えた」

「ず、ずるいよぉ!!あの子の方がちょっと早く告白してきただけでしょ!?だったら私の方が好きだし、幸せにしてあげられるよ」


ボロボロと
目から涙を溢し、俺の胸元を叩いてくる副会長

けれど彼女を慰めようともあやそうとも思えない
中途半端な同情なんてする気もない


「俺が告白した。俺が、あいつをずっと好きだったからあいつ以外考えられない」


そこまで言うと目を見開き
ずるずるとその場に座り込んで泣きじゃくる副会長



「じゃ、帰るから」


俺は明らかにめんどくささを隠さず溜め息をつきながら、重い気持ちのまま
まなを迎えに行った











「………まな?」

いつもより少し遅れた時間
彼女がいる教室に行けば、彼女はいつもと違い窓辺の床に直に座って壁に寄りかかっていた


「帰るぞ?」


ゆっくりと目を開く彼女に近づけばいつもとは違い
隣をとんとんと叩いて、俺も床に座れと誘うまな

真意が読めないまま隣に座ると、まなは俺の手を握りまた目を瞑った


「…………」

「…………」



なんの言葉もない、静かな静寂
遠くからは野球部の掛け声やブラスバンドの合奏が聞こえる




静かな、静かな、まながいる空間。
いやとは思えない。むしろ俺はこれが好きだ


より募る、まなへの愛情
より募る、まなとの安心感


こうしているだけで、副会長から告白されて疲れた心が癒される



「……大丈夫?」


不意に聞こえた小さな声
そちらを向こうとすると、コテンっとまなの頭が俺の肩に寄りかかった

可愛らしい仕草に笑みがこぼれる


「ありがとうな」


きっと俺が元気が無さそうだから気遣ってくれたんだ
俺からも、まなの小さな体によりかかり


小さくても絶対的な安心感をくれるまなに甘えた



「フるのも疲れちゃうよね」


油断しきっていた
安心しきっていた
だからまながそんなことを言い出したとき、違和感と言うかギャップもありぎょっとした

「…………知ってる?」


まなに寄りかかりながら、じっとそちらを見ようとすると彼女はクスクスと笑いながら俺を連れだって立ち上がった


「見える」


そして窓から見る風景には
────生徒会室があった




「ちゃんと、断ったからな」

「うん」

「……よく見てたのか」

「ストーカーにならない程度には、好きな人を見ていたよ」

「…………そっか」





放課後の、静かな教室
不安も疲れも消し去ってくれる彼女となら

いつだってずっと一緒にいたいと思った



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