落ち着いて、整理をしてみようか
其の壱
あまねちゃんを車で一緒に送っていった和樹坊っちゃんが、帰宅するなり厨房に来た
其の弍
悔しそう?いや照れてるんだなこれは。照れて睨みながら私を見上げる坊っちゃんきゅんきゅん
そして
「……不覚だが、料理長が作るマフィンが一番美味いしあまねも好きだから……作り方を教えてくれ………って、聞いてるのかよ」
今に至る
うっわああああ、和樹坊っちゃんが美味しいとか感想をいってくれることはレアだよ!!
貴重だよ!!デレ期ktkr!!!
もう抱き締めたくて仕方がない欲望に震える手を必死に堪えて、状況を整理するためにフリーズをする
「ちょっと待ってくださいねー」
なんとかそう言えても内心は喜びと欲望キャッホー!!でどうにもならぬ
とりあえず気付けに近くにあった今晩の料理に使ったブランデーの残りを瓶ごとラッパして、落ち着かせる
「お、おい何して……」
「とりあえず、」
とりあえず、落ち着いて、あれだ
「抱き締めても良いですか?「怒るぞバカ野郎」」
そして数少ない和樹坊っちゃんのデレ期は終わった
「そう、気泡を作らないようにゆっくりと……」
さすが器用な和樹坊っちゃんだと思う
指示を的確にこなして、真顔でカップにゆっくりゆっくりタネを入れる頑張りようは目的が目的なだけに微笑ましい
ようはあれだ
あまねちゃんのバレンタインのお返しに初めて手作りお菓子に挑戦らしい
「出来た、」
「じゃあ次はオーブンで焼くのを待つだけなので、待ち時間お茶でもしましょうか」
業務用のオーブンにマフィンの元を入れて、嬉しそうに笑いコクリと頷く坊っちゃんに萌え萌えしながらもお茶の準備をする
和樹坊っちゃんかわええええええ
広間に移動すべきか迷ったけれど、坊っちゃんが私の休憩用の椅子に座ったから小さなお茶会は調理場ですることにした
和樹坊っちゃんかわええええええ
その時
コンコンと調理場の壁が叩かれ振り替えると、そこには高校生の一番上の坊っちゃんが居た
「あれ、和樹?まぁ良いや、志岐さん今大丈夫?」
「なんでしょうかー」
紅茶飲みます?と差し出した紅茶を断りながらも一番上の坊っちゃんは丁寧に頭を下げる
「また今年もホワイトデー用のお菓子頼んでも良いですか?六人分ほど」
「はいさー。相変わらずもてますねぇ」
「全部義理ですよ」
ははは、と困ったように笑いながらも彼は和樹坊っちゃんに志岐さんに迷惑かけるなよと言ってから直ぐに厨房から出ていった
ふむ、去年はマカロンだったから今年は一口サイズのタルトでも作るかなぁ
そんなことを考えながらもオーブンについてる窓から中のマフィンの様子を見ながら、いつ作るか頭の中で予定を組む
明日の朝食のあとにやろうかなぁ
せっかくだから色々作りたいし。あ、でもナッツとかフルーツの在庫あったっけ
ああ、マフィンにデコレーションしてもいいなぁ
「和樹坊っちゃんもう少しでマフィン焼き上がりますけど、生クリームとかでデコレーションしますか?急だからあれですが多少材料はありますが」
まぁ無いならチョコレートを溶かして作れば良いんだけどね
そんなことを思いながら振り向くと、和樹坊っちゃんはじーっと私を凝視していた
「ん?」
移動しても視線はついてくる。なんだろう
「どうかしましたか?」
「……料理長って、性格はあれだけど仕事はすごいんだな」
デレ期再臨!!!!
内心もだもだしながらもとりあえず笑顔を作ってふんばる。だきしめて撫でくりまわしたい
「あー、うん。でも和樹坊っちゃんが手作りとか意外ですね。坊っちゃんならプレゼントとか物を買いそうなのに」
「……ハンカチとポーチも用意したけど…でも…」
言い澱む坊っちゃんに首を傾げて先を促すが
私は、促したことを後悔した
「……あまねが、手作りのものには思いが詰まってるっつってたから」
かああああああわあああああいいいいいい!!
可愛いんだが、かわいい、可愛いんだがああ!!!!
可愛い可愛いツンデレ天使様と、思いのつまったお菓子を作りながら
うちの子はみんな良い子だなぁ、と私は最高の職場に感謝した
『思いをこめて』
帰