「おい……女性が喜ぶプロポーズってどんなんだ」

悩みぬいた末、腹心の部下にさりげなくぽつりと尋ねたつもりだった

だが実際はフロアの人間が全て固まり俺は居心地の悪い空気に包まれた。女たちも見てくるからそれだけでぞくりと鳥肌が立つ



「は……か、課長、が、プロポーズです、か?」


渡部課長がプロポーズ…うんぬん
課長に彼女いたの!?ごにょごにょ
いや男に告白だろとか全部丸ぎこえだぞお前等
ぎろりとその場のやつらに睨みをきかすと雑踏は一瞬は収まった

聞く場所を過ったか。だがしかし最近結婚したこいつに聞くのが一番だろう


「あぁ。何がなんでも落としたい女がいるんだが……俺の出来る限りのことはしたんだが通じないんだ」


色々と
本当に色々とあの手この手で美由紀を口説いたが



『………はぁ、』


いつもポカーンとしたこの言葉で終りだ
続きの言葉を待っても待ちが長すぎて断られそうな気がしていつも俺から話を終わらせちまう




おっとりを通りすぎた鈍な彼女を思い出していると、またフロアが丸聞こえの囁きで埋もれていた



「公衆の面前で告白とかどうでしょう?」



そう言ったのは
短期契約でうちで働いてる俺よりやや上の女性で
それを皮切りに若いおんなどもがはしゃぎだす


「あと高層レストランでプロポーズとかも憧れますよ?」

「部屋を花で埋め尽くして、真ん中に指輪とか」

「きゃー!!それ素敵!!」




「だ、そうですよ」

「…………」

正直、女なんかうちの部署に置くのは大反対だった
それのせいで告白されたりからまれたりとろくなことがないからだ



でも





今このとき、俺は初めてうちの部署に女を突っ込んだ総務人事部に感謝をした

そのまま携帯で家にいる美由紀を呼び出す


「……もしもし、美由紀か?」

『はい美由紀です、どうかしましたか?あきら君』


し……んと、俺の電話を盗み聞きする奴等はウザかったが
くるりと背を向けて、そのまま会話を続ける




「今晩外で食うぞ。母さんを送るから孝司は預けてちゃんとした服装で待ってろ」

『え……はい。わかりました』


あっさりと
あっさりとスタートは切れた

ぷつりと通話を切る
さぁて問題はここからだ


「課長!!私当日でも予約出来るお洒落なレストラン知ってます!!」

「あ、今からならディバリエホテルのレストラン予約とれるかも!!」


一斉に色めき立つ場を、ありがたいと思いながらも断る
そこまでやられたら情けねぇしな
プロポーズ方法を教えてくれただけで良い


「いやいい。でもありがとう、感謝する」

「か、課長が仕事意外で話してくれた…!!」


謎の盛り上がりを見せる部下を尻目に
俺は幼少から良く行く旅館に電話をかけた



あの旅館の懐石は絶品だからな




とりあえず

OKを貰うまで言われた方法は全部試してみようと思う








彼は知らない


『結婚してくれ』

『はぁ………』

してくれも何も、もうすることは決まってるんじゃないのかな?




彼女はとっくにその気だったことを






『男の闘い』



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