「ねぇしっきー?なんでしっきーは鷺田なんかが良いの?あいつつまんないっしょ」
ぱくっと、サーモンのカルパッチョをつまみ食いする悪ガキの頭を軽く未使用のおたまで叩く
「せっかく盛り付けたのを摘ままないでください」
「しっきー俺一応屋敷の家人だよ?敬えよ叩くなよー」
「叩かれたく無いなら邪魔しないでください。敬われたいのならぐちぐち言わないでくださいよ」
はぁ、とため息をつきながらもうソレ坊っちゃんが食べてくださいと言うと口移しで。とか言われたからもう一発おたまで頭を叩く
全く
おたまを洗い、乾燥機に置いて仕方がないからちゃんと向き直って相手をする
「だってさぁー。どーんなに俺が口説いても駄目だったのにくやしーじゃん?鷺田に脅されでもした?」
「まぁ脅されるみたいなことはされましたがね」
「……あ?なにやってんの?」
不意に
坊っちゃんが飄々とした態度を崩し、一気に怒りの空気を放つ
それを軽く笑んでかわし、コップに水をついでごくりと飲む
「なんだよ、何お前結婚強要されてんのかよ」
「さぁね、坊っちゃんには無関係ですから」
「……関係、持てば良いのかよ」
「私たちには主従関係しかありませんよ」
笑ったまま
彼に貰った婚約指輪に、そっとキスをすると
坊っちゃんは悔しそうに顔をくしゃりと歪めた
『諦めたくない、相手にされなくても』
帰