うちの父さんは



「良いか、メル所詮この世は金だ」



非常にがめつかった。






「金があればお前の母ちゃんも生きてた。金があれば新しい服も買ってやれたし美味いもんも食わせてやれた」



けれどとても優しい人だった



「でもなメル。客商売でそんなけちくさい奴は客が居着かない。だ、か、ら!!」


私はそんな父さんが大好きだった


「お前は化け猫でもタヌキの皮でもなんでも被って稼げ。そんでたくさん稼ぐんだ、いいな!!」

「はい、お父さん!!」











「んー、しょ!!」

井戸から重い水を組み上げて持ってきたバケツに入れる
それで、汲み桶を後ろに居た肉屋のおばさんに渡す

ちなみに名前を呼ぶときは間違えてもおばさんなんて言っちゃいけない。


「はい、リアさん」

「今日も働き者だねぇメル。でもそんな重いもの運ぶのは大変だろう?いまうちの息子を呼んであげるからね」


このままでも楽を出来るが
それでは『がんばり屋のメル』の印象が薄れる

「ううん良いのリアさん。これくらい私ても……う、んしょ」


だから敢えて重いバケツを持ち

「あぁっ!!」

ツルっと手が滑ったように見せて、ばっしゃあああん!!とばらまく
それで悲しそうな顔をしてうつむけば完璧だ


「あぁだから言わんこっちゃない!!キール!!ちょっとキール!!メルを手伝ってやんな」

「ごめんなさい……あ、じゃあリアさんあとで焼きたてのおいしいパンを届けるね?」

「また焦がすんじゃないよ?あぁメル、じゃあ売れ残りで悪いんだけどドドゥの肉を持っていきな。ちょっと待ってな」

「え、リアさんそんな悪いよ!!」


私の話を聞かずににっこにっこ笑いながら肉屋に駆け込んだおばさんを見ながら内心はほくそ笑む


たかが10アランのパンで水運びとドドゥの肉かぁ
今日は肉を買わないで済む。ラッキー



そして肉屋から出てきたのは、おばさんではなく
肉の包みを持ったおばさんの息子のパズだった
彼はおはよ、と笑うと手に持ってた包まれた肉を私に持たして軽々と水を汲む



「ごめんね、パズ」

「良いよ、メルだから。それよりメル、さすがに肉は落とすなよ?」

「落とさないもん!!私そんなドジじゃないもん」

おばさんくらいの世代に気に入られる良い子ちゃんは
同年代の子にはぶりっことして嫌われる

だから同年代の子には私の小さめの身長を利用してまるで子供みたいに表情をクルクル変えるのが良しだ


そうすれば、メルはお子様だから仕方ないなぁで大概なんとかなる

「あはは、そんなこと言ってこの前は落としただろ」

「この前はこの前だもん。良いもん、そんな意地悪言うなら自分で運ぶから。貸して!!」

ほっぺにぷっくらと空気を入れて、手を出すと柔らかく笑ったパズにその手を掴まれる

「ごめんごめん。メルが可愛くてさ。ほら転ぶといけないから俺と手を繋いで行こう?」

「もー、いつも子供あつかいして」

「違うよ、メルが可愛くて可愛くて仕方がないんだよ」


水が入ったバケツを片手に持ったパズと手を繋いで、井戸からちょっとある私のパン屋まであるく
パズは本当に優しい
裏と表がきっちり別れている私とは違って
私はそんなパズに好意を抱いているが



「本当に、メルは可愛いよ」

「小さいって言いたいの!?」

「違うよ……俺の中ではメルが特別だから、特別可愛く見えるんだ」


彼が見ているのは
彼が可愛いと褒めるのは



「ドジなところもがんばり屋なところも、天然なところも……メルの全部が好きだよ」



彼が好きだと言うのは
全部偽物の私だから


「ぜーんぜん褒められてる気がしないんだけどー」

「いや、そうじゃ無くてメル」

「パズのいじめっこー」



頬を膨らませて、拗ねたふりをしながら
真っ赤になってるパズに気づかないふりをしてそれを受け流す



『うそつき少女』



大好きだよお父さん
でも私、そろそろ素直になりたいよ







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