ようやく、だ
貴族でもない俺だけれど政治手腕を発揮し、王のお気に入りになり国の実権を握れる大臣の座についた


この座につくまでにたくさん我慢や苦労をした
毒を盛られたり暗殺されかかったり
気に入られたがために王女をめとらされそうになったり、大老の親族の子との縁談を進められたり



……けれど、それも一番の我慢に比べたら微々たるものだ




愛しい、愛しい、隣にすむ馬鹿な少女


俺は彼女に依存ともよべる愛を注いでいた


だから彼女を幸せにしたくて


間違っても、俺の母のように
俺の父に金をたかられ暴力をふるわれないように

町民でも国の一等地に家を構えられる『大臣』まで上り詰めた


辛かった
へらへら笑う、愚鈍な彼女がいつか狡猾な男に騙されるんじゃないか
俺がいないところでその肌を他者に許してるんじゃないか

月に一度しか逢えぬ身では彼女の全てなどわかりもしない



そのせいできつく当たるも、それでも彼女は嬉しそうに『お兄ちゃん』と抱きついてきて


───他のやつにもそんなことをしてるんじゃないか


そう思うと腸が煮えくり返った








けれどそれも今日で終りだ
新居も出来た。地盤も固めた
だから、彼女を迎えに来たのに……





「おにいちゃん!!」


嬉しそうに嬉しそうに笑う少女は血にまみれ
その足元には親父の亡骸が横たわっている


あまりの状況に眉間に皺を寄せると真っ赤な血を滴らせながら彼女が俺に抱きついてきた


「あのね、お兄ちゃんが嫌がる人やっつけたの。これでまた遇いに来てくれるよね?」



愛しい、愛しい、少女
たとえ親父を殺めたとしてもその愛しさは変わらない

ましてや、俺は親父がだいっきらいなのだから






つとめて甘い声で名前を呼んでやると、彼女はまるで幼女のように嬉しそう笑う





「今から僕がすることを、親父にされたから嫌で嫌でやりかえした……って自警団に言いなさい」

「おにいちゃん?」

「そうすれば、君は僕の花嫁ですよ」




嬉しそうに嬉しそうに笑う彼女を
父親の死体の隣で、押し倒し


ぼろい服を脱がす






露になった、無垢な肌
人を殺しても笑っていたのに、羞恥に戸惑う愛らしいうぶなさま




彼女を貫いたとき
初めての鮮血が俺を汚したが

それにこの上のない幸せを感じた





彼女を牢獄になんか送らせない
彼女は俺の作った檻の中にいれるんだ

俺の愛は、決して変わらない





『1 魔術師』
意志・手腕・外交








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