夕飯時になり志岐さんがお好み焼きの具材とホットプレートを持ってきてくれた。
「焼きますか?」と聞かれたが、せっかく一流の料理人が目の前に居るのだからと遠慮すれば、物凄い手際の良さでお好み焼きが焼かれていく。
素直にその光景に目を奪われていけば、最後に私の分が皿に乗せられた。
乗せられたが。
「…おい、料理長。客人にそれは失礼だろ、」
「小春、俺のと交換するか?」
明らかに私のお好み焼きは他の人よりも小さかった。
ニコニコとしながら期待の目を送ってくる志岐さん。
昼食もおやつも本当に美味しかった。
面倒臭くて堪らないのが現状だけど。
「…何でやねん、」
ずぃっと寄せられていた上半身に片手で突っ込みを入れながら言えば志岐さんはわかりやすく喜んだ。
「出た!出た!本番の何でやねん出たぁああ!」
興奮する志岐さんにあまねちゃんが「よかったね」と声をかけていて。
志岐さんの隣に居た執事さんに思いっきり頭を下げられた。
「家の従業員が申し訳ございません」
「あー、えぇよえぇよ。志岐さんみたいな人好きやで」
何となくその光景に笑ってしまえば隣ではスズが「…俺は?」と漏らす。
「はいはい」とあしらいつつも髪を撫でてやればとりあえずは納得した様子だった。
そして私の言葉にパァっと顔を明るくさせた志岐さんは私から見ても素敵な人だった。
「失礼してしまいすみませんでした。さ、これは執事長の分ですので今から小春さまの分焼き直しますねー」
サッと私の目の前にあった皿を取り、執事長さんに押しつけた志岐さんが再び手際良く焼いてくれたお好み焼きは特別だと言って海老を多く入れてくれていた。
絶品のお好み焼きを食べ終えた後、これまた手際良く片付けていく志岐さんを感心して見ていればパチリと目が合う。
「ところで小春さま」
「うん?」
「一つお願いがありまして」
美味しい料理とその明るい人柄にほだされたのか。
頷いてしまったのが間違いだったのかもしれない。
「お召し物をご用意させて頂けませんか?今のままでも十分お綺麗なのですがどうしても小春さまに着て頂きたい物があるんです」
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