コンコンとノックの音が聞こえても


まだ朝も早いし眠くて仕方がないから、俺は無視して布団にまるまった


─────コンコン



それでも聞こえるノック

“俺”の部屋にこんな時間にこんな長時間ノックをする奴なんざ、一人しかいねぇ


「開いてんよ。なんだよアーリィ」


窓の外はまだ暗く日も昇っていない
ったく、常識的で常識外れな姉貴だぜと心の中で悪態をついてると


ひょこひょこと
壁に手をついたアーリィがなんとか入ってきた


それをみて慌てて飛び起きて肩を貸す


こいつが、怪我をしたのか?
こいつに怪我をさせられるような奴なんてそうはいないはずだが……



「すまない、苦手なのは承知してるんだがちょっと白魔法を頼んでも良いか」

「……良いけど、どうした。」


ふう、とベットに座らせると余程歩くのがきつかったのか僅かに姉貴は笑った

そんなに酷い怪我なのか




────場合によっては制裁行為をと、考えていた俺は



アーリィの一言で見事に凍りついた













「破瓜を済ませたんだが、想像以上に痛くて」







はかをすませた








墓をすませた
意味がわからないから違うな




バカをすませた
いやこいつはいつだって堅物バカだ




破壊をすませた
それっぽいが、確かに余計な一文字が足りなかった









はかをすませた









……………破瓜をすませた。



「うえええっ!!え、は、はかぁっ!?」


「うるさいぞ。まだみんなは寝てるんだから静かにしろ」


「いや、え、…………だ、誰としたんだよ」


「旦那様とに決まっているだろう」




旦那様=魔法使い=婚約者




え、

ちょ、



俺の嫌味から決まった婚約は、ただの表面上のものじゃなかったのかよ
少なくとも俺と腐れ王女の婚約は表面だけのものだ






ま、マジかよ……




「……嫁に、行くのかよアーリィ」


「婿を貰うんだ」


「そーじゃなくて!!マジで結婚すんのかよ!!」


「旦那様が是と言ったならば」


「……………」



何を考えているのかわからない表情の姉貴をベットに寝かせて
白魔法をかけてから、そのまま俺も突っ込んで小さいときみたいに抱きついたまま二人で布団を被った


「………どうした?まだ一人で寝るのが怖いのか?」

「………そーいうことにしといてくれ。頼むから、朝までこのまま……」


「ガゼルは大きくなってもまだまだ子供だな」


誰が子供だばか野郎



そうは思うものの、






アーリィの結婚が着実に近づいて来ているのを今更察した俺は











今更、シスコンを自覚した








『気付きたくなかった現実』













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