「こらー!!カナリナちゃんと手伝いなさーい!!」

「えー」

「やだー」



家の中からブーイングとライムの怒鳴り声が聞こえる
お転婆にわんぱく。うちの子供達は本当に元気だ


────でもそれで良い。騒ぐ元気も暴れる元気も、あるだけいい







目を閉じれば思い出す。弱かった私が、守れなかった大切な大切な妹の一人を─────





















私とライムは物心ついたときには、貧民街の中でもさらに酷い裏路地の片隅に転がっていた


そこは家なんかじゃ無いし、屋根も布団も無い


硬い石の上で寝てゴミ箱を漁って、市場で油断してる露店から食べ物を盗んで物乞いをして



毎日、死にかけながら生きていた



時にはイラついた大人な殴られたり蹴られたりしたし、
幼女趣味のおっさんにライムがさらわれそうになったりもした

あまりに厳しいのでライムと一緒に小さな屋根を作って雨風をしのげば、その屋根も家の無い大人に取られた




そこは、子供にも大人にも容赦が無い世界で

けれどいつしか、私たちのもとには同じような子供が集まり出した


寒い日には3〜5人抱き合って眠る
増えたり減ったりしていたが、あのときの私にはそんなことを気にする余裕は無かった

自分より弱いやつのために食べ物をとってきてもやったが、自分の分すら手に入れられない日々が続いていたから






次にいなくなるのは私かもしれない







「一緒に生きる人って、家族って言うんだって」


ある日、酷く冷える夜
寝たら死んでしまいそうだからみんなでずっと話続けていた日

名も知らない少年がそう言った


「じゃあ、私たちって家族?」


一番小さなガリガリに痩せた少女は嬉しそうに笑った


「じゃあニーとライムはお父さん?」


片目が無い少女も嬉しそうに笑って、


「違うでしょ。私たちはお姉ちゃんだよ!!ね、ニー?」


ライムも嬉しそうに嬉しそうに笑った
寒くて空腹で辛いのに笑っていた


そんなみんなを見ていたら、私まで笑みがこぼれてきた


「あぁ、そうだな」


苦しくてもどんぞこでも
一緒にいればただ嬉しい
そばにいなくても、下の子達を守るためならなんでも出来る気がした







貧民街の裏路地の片隅に集まる、小さな子供達






─────それは、私の家族だった











「っ、寝ちゃダメよ!!死んじゃうわよ!!」

「おい、起きろよ!!」




「あったかぁい………なんか凄くあったかいよぉ」




けれど家族を自覚したその日
その年一番の冷え込みだった夜を一番小さかった少女は乗り越えられなかった




目の前で喪われる命
冷えていく身体






大切な人を目の前で喪ったあの絶望感は




いまでも覚えてる






「あれニーじゃん。なにしてんだよ」

「ライム先生のお説教タイムにより入れねぇんだよ」

「うわ、まじかよ。あーららーまだしばらくとばっちりくるから入れねぇなぁ」


玄関前の石畳に教会で手習いを済ませてきたらしいシータと座り込む
シータもうちに来たときはまだ三歳くらいだった


────あの子と同じくらいの年頃の痩せた少年だった



それが今では肉も筋肉もしっかりついた、普通の少年だ

なんとなくその頭を撫でる
ごわついた髪までも愛しい


「なんだよ」

「いやぁ大きくなったなぁ」

「大丈夫か?じじくせぇぞ」

「俺もシータのためにがんばって働かないとなぁ」


大切な家族のためなら頑張れる
その思いはあのころから変わっていない



でも、



「無理すんなよ。ニーは俺ぐらいのときからもう王宮で働いてたんだろ?うちはカウもサンデーもライムも養ってくれてるから無理だけはすんなよライディルも端切れで服とか作ってくれるし!!」




私の思いは下の子達にも継がれて
今や私も守られる人物になっていた



「あはは、ありがとな。そうかもうすぐ勤続15年かぁ」


「うわ、すげー」



けらけらと笑いながら過ごせる私の大切な家族
私達を救ってくれた大切な親友
それから、──────あの方



いつまでもこのままでいられたら良いな
そんな生ぬるいことあり得ないけど




私は密かに平和な『今』を願った



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