もそ、と寝台の上で起き上がる
そのまま六花の寝顔を見小さく笑うと、朝の支度をしようと寝台からおりようとした



が、それは力強くて繊細な腕に捕まって阻まれた


それだけでドキドキと胸が高なる
六花に触れられるだけで次になにをされるかわからなくて、私は油断出来ない。


警戒してもあまり意味は無いけど



「しろがね──」


かすれた寝起きの声で呼ばれて
先ほどとは違う意味でドキッとした。このたらしめ………

「もうすこし、一緒に………」


でも
寝起きでぼんやりした六花が少しだけ可愛かったから


私は彼に引かれるままその腕の中に収まった



六花のことだからそれでもセクハラとか何かすると思ったのに
私を抱きしめるだけで何もしない

「……六花?」

「はい……?」


寝てるのかと思ったら、微睡み状態でまだ起きてるみたいだ
………そっと私からも六花に抱きついてみる。するとそれだけで何故か安心出来て身体中の力が抜ける

彼に触れられるとドキドキするのに
彼に触れると安心するなんて、なんて矛盾───

「しろがね」

たぶん髪に唇を寄せられて
そのままさすさすと背中を撫でられると


────一気に睡魔に襲われた



「すきです、だいすきです。あいしています」

掠れた声で私に染み込むように囁かれる言葉を聞きながら



まるで洗脳みたいだ。わたしも大好きだよ



そう思いながら眠りについた



『ドキドキも安心も』











「ふ……ん…」

二度寝から覚めてゆっくりと目を開けると
目の前は悪夢だった




「おはようございます銀」


顔面わずか10cmほどの距離で
私を見つめて微笑む六花がいた
これは、もしかしなくとも………


「銀の寝顔はやはりイイですね無垢であどけな「もういいから!!」」

慌てて飛び起きて、口を塞いでから寝台から逃げ出す

最低だ、なんか最悪だ!!

ぷんぷんしながら服を身にまとっていると、再び力強くて繊細な腕に捕まる


「朝から可愛くて堪らない銀を見てしまったのでちょっと興奮してしまったんですが……どうすれば良いですか?」


後ろから抱き締められて
腰のあたりに当たる、あ、あれが──っ



「知らないっ、離してよ!!」


慌ててもう一度振り払い、顔を洗うために本体から飛び出す




「──本当に可愛らしいんですから」


そう笑う六花なんか知らずに、私は六花に対する愚痴を言いながら小川まで小走りで歩いていた



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