「うしっ、サンキューな恭夜。もう終わるから」

「あ……はい」

「……なんだよ」


不機嫌そうに睨まれて、つい長年培った癖で何も言えなくなる
浅黄の兄貴で年上の幼なじみの伊吹は昔からかっこよくって、同じ男として憧れていた────だからこそ、信じられなかった











伊吹が洗濯物を干す姿が



しかも、ち、ちらっと見たけど女物のランジェリーまで干してた


信じられない
しかも彼女さんが不在だから干してる訳じゃ無さそうだ───だって、


「どこも同じようなニュースばっかり」


そう言って、ぷつりとテレビを消した俺の目の前にいるのは彼女さんだし
本気でよくわからない


さして秀でて美人でも無いこの女性の何処を伊吹は好きなんだろう
伊吹ならもっと可愛くて、甲斐甲斐しい彼女も出来ただろうに


「さっきから何?じろじろ見てきて」

「………いえ、」


全くもって伊吹の趣味がよくわかんねぇ



「恭夜、あんま那智留を見るんじゃねぇよ。いくら那智留が可愛いからって」

「伊吹ウザイ」


化粧っけも無く、明らかに寝起きの頭にパジャマを着てるやつになんか何も感じません

………まぁパジャマは紫と白で可愛い感じのやつだけど




「それで?どうしたんだ?浅黄と別れ話相談ならいつだって受け付けるぞ」

「それはないっす。いや、その……ど、どうやったら、で、デートに誘えるか、教えて欲しくて……」


それこそが、ワザワザ二人の愛の巣に出向いた理由だ
同棲にまで発展した伊吹ならデートの誘い方くらい軽いだろう

なのに、


「………どうすればデートしてくれますか那智留さん」

「だから何で同じ家なのにわざわざ外で待ち合わせして遊ばないといけないのよめんどくさい」

「いやでも最近なちと行ったの遠くてスーパー……」

「スーパーだって伊吹が無理矢理ついて来たんだけどね。そもそも待ち合わせが意味がわかんない」

「そんなの!!ごめん、遅れた。ううん今来たところだよ?がやりたいからに決まってるだろう!!」

「夢は夢の中で見て」



………あっれぇー?なんか彼女さん

浅黄にそっくりなんだが


え、もしかして伊吹ってシスコンなのか
そんなことをぐるぐる考えている間にも二人の言い合いは続き、結局伊吹は負けてた



「……悪い恭夜、デートの誘い方とか俺には無理だった」

「いや、なんかすみません」


気がつけば何故か俺ががんばってくださいと伊吹を慰めてて
あれ、伊吹ってこんなやつだっけ?と思っていたそのとき







彼女さんの矛先がこちらを向いた




「……誘ったことあるの?」

「へ?あ、いや、まだっすけど…」

「ならぐだぐだ考えてないで誘ったら?浅黄ちゃんならたぶん照れても断ったりしないだろうし」



そこで彼女さんは
ふわっと笑って一言、頑張れっと言った




どき





いやドキじゃねぇよ!!



「伊吹!!えっとなちるさん?ありがとう!俺頑張ってみるわ」


言うだけ言って、転がるように愛の巣を出る





結局どうやって誘えば良いのかよくわかんないけど



“頑張れ”



なんだか、すごく簡単に誘える気がした







『俺、奮闘中』






いやしかし伊吹がなんであんなに彼女さんに惚れてるのかわかった気がする










(浅黄ちゃんもめんどくさそうな彼氏を捕まえたなぁ)

「なち!!お洒落してどっか行こう!!」

「やだめんどくさい」

「せっかく休みなんだし……」

「………じゃあコンビニで」

「今すぐ着替えてくる!!」

「え?あーあー……」


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