「────ずいぶん御執心なんですね」

「お主には言われとうない」



今日は、珍しく六花が出張だった
神樹になった桜の樹の状態管理らしい。でもその樹は六花とは種類が違うって移動中に聞いた


そこで出逢った、綺麗なお兄さんと


ちょこん
もじもじ


彼の影から、こちらを見る私と同じサイズの少女
彼女も私が気になるのか、さっきからずっと視線が合う


「銀?私以外の何を見てるんですか?」

「…やはり御主の方が酷いでは無いか」

「彼女は私の嫁だから良いんですよ」


まだ嫁になるって言って無いのに!!
そんな声は
ねぇ?と妖しい眼差しを六花に向けられて何も言えなかった





「およめ、さん?」



不意に聞こえた、甘やかで可愛らしい声
その場の三人の視線が小さな小さな少女に集まる


小さな少女はきらきらした純粋無垢な目でこちらを見ていた


「夕霧、夕霧、私“およめさん”におめでとうしても良い?」

「私は構わないけれど…あちらの方はどうなんだろうねぇ?」



皮肉たっぷりで言われた言葉に六花の表情が不快げに変わるけど
小さな少女にはかなわないのか、私はかなり久しぶりに大地におろされた


「お姉ちゃんこっち!!桜のお姫様にお花をもらおう!」

「は、はい」

「あ、」


とてててと駆け寄った少女に手を握られ、屋敷の裏手の樹まで連れていかれた
ちらと一瞬だけ後ろを振り向くと六花も綺麗なお兄さんも嫌そうに顔を歪めていた


「……………」












「はい、これもこれも。かわいー、きれーい」

「あ、ありがとうございます…」


にこりと笑った桜の精霊さんが、りりさんに綺麗に咲いた花を差し出すとそれがすぐに私の髪に刺される
もう三輪も飾られて、まるで私は花瓶みたいだった

「およめさん、良いなぁ…」

頬を染めて可愛らしい表情でうっとりと私を見る少女があまりに可愛くて可愛くて

「りりさんもきっとなれますよ」

頭を撫でながらぎこちなく笑うと、ありがとうお姉ちゃん!!と抱きつかれた
私よりやや小さな少女は、とても純粋で可愛らしかった
















「ずいぶんとまぁ、楽しそうでしたねぇ?」

「りりちゃん、すごくかわいかったからね」

帰り道に、六花に抱かれながら軽く攻められた
確かに六花はめんどくさいし怖いし、いじめっこだけど
初めて六花以外と関わったせいで────


「どうかしましたか?」

「…なんでもない」

彼のとなりだけが、すっごく暖かくって落ち着くと言うことを知ってしまった



────もしかして私は六花が好きなのかもしれない。
でも、まだそんなことは言わないけどね?



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