“コテン”
一抱えもあるその黄色と黒の模様のたまごは、
草原の真ん中に草をかき分けてしっかりとその存在感をかもしだしていた
「……………たまご、ですか?」
そよそよと流れる風にもゆれずにででーんとしているたまごの母親を探しても見当たらない
ダチョウの卵よりやや大きいそのたまごの心辺りはなかったが、とりあえずこんなところに放置しては冷えてしまう
「うちに来ますか?」
そういいながら僅かにざらついたたまごの側面を撫でると僅かに揺れた気がした────
「………はい?」
『がう、うぅうう〜』
たまごを毛布にくるみ、ほんの僅か席を外した隙に
自室は大惨事になっていた
障子紙もびりびりに破かれ、穴も空きふすまも引っ掻き跡だらけ
布団は中身の羽毛が出されていて、部屋中に舞い飛んでいた
『うー!!うう゛ー!!』
たまごの殻を額につけて、爛々と輝いた目で僕を見上げる小さなふわふわの毛並みの獣
「お前がこんなにヤンチャしたんですか?」
『がうっ!!』
僕の足の回りに転がりながらかぷかぷとかじりながらじゃれつくその獣を抱き上げると、四本の足と尻尾をだらーんと伸ばしながら獣………たぶん小虎は嬉しそうに吠えた
これが小さな虎の利虎との生活の始まりだった
帰