「す…ご…」


六花と過ごす、二度目の春
私は視界いっぱいのたくさんの薄紅色の花々に圧倒されていた。

「銀?」

目が、離せない
とにかくふわふわの雲みたいで綺麗な個の集合体に呑まれる
隣の六花の服の端を持ちながら首が痛くなるくらい上を向いては青空と薄紅の明るいコントラストに酔いしれた


この桜の花は前も見た筈だ
けれど花びらの一枚一枚にも愛しさを感じるからか、前よりもっともっと胸が締め付けられるくらいに美しく感じた



「……そんなにうっとりと見られるとなんだか照れてしまいますね」

「………わっ、ちょっ、何!?」

突然抱き上げられて視線を無理矢理六花に固定させられる。
六花はまるでアレの後みたいにご機嫌で、私を抱えたままひょいっと樹に登り始めた








六花に連れてこられた場所は桜の樹の高いところにあるくぼみで
そこに座ると360度と上のどこを向いても花々が咲き誇り、綺麗すぎてなんかいろいろと変な感じになってきた


「私の花はお好きですか?」

「すっごく綺麗……六花なのに可愛くて、好き」


ふふふ、と笑いながらぎゅーっと抱き締められて自分の発言にハッと気付いて慌てて顔を背ける

「薄紅色に囲まれてるせいで銀が真っ赤で照れているのが際立ちますね……」

「うるさいっ」





















「この花は、銀に好かれたい一心で咲いた私の心の一部です。数万の花は総て貴女のために咲いてます…だから…」





“もっともっと私に魅了されて下さい。愛して下さい”






「〜〜〜〜っ!!!」


耳元で囁かれる低い声
色気垂れ流しの嬉しそうな綺麗な六花
限界を超えた羞恥心でぷるぷる震えながら彼の胸に顔を埋めて真っ赤らしい顔を隠す




「バカ」

「馬鹿になるほど愛してます」

「変態」

「常軌を脱するほどに好きすぎるんです」

「───……すき」





さあああ
風が吹いたとき
たくさんの花が嬉しそうにカサカサと音を立てた気がした









『春爛漫』










「で、何この手」

「春ですから。いつもより銀が欲しくて堪らないので」

「や、やだ、もうちょい桜の花を見たい!!」

「桜の花も私も同じですよ?好きなだけ私を見ていて下さいね、一生」





桜の花=六花は絶対イコールで結ばれないと思う!!
そんな私の叫びは彼の唇で封じられた。





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