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[26]干支物語
by うみかん
2011/02/13 13:48
管理人:干支物語
『下界に遊びに来ました』
「ほらーりこりん笑って笑って」
「っふぎゃっ!?」
パシャッと眩しい閃光に驚いて巳乃さんにしがみつく
あたりをキョロキョロと見回すが四角い狭い箱の中は特に変わった様子は無かった
「り、利虎様かわいいっ!!涙目ですっごく可愛く撮れましたよ？」
「え？っ消して下さい!!」
「わーりこりん可愛いーこれ保存ねぇ」
機械の画面には
私が怯えたみたいに巳乃さんにしがみつく写真があった
そのまま閃光に驚かされながら数枚を撮ったときにはもうぐったりと疲れはてていた
「りこりんは、らいとんラブで良いんだよねぇ？」
「未明様はわかちゃんらぶでしたっけ？」
「ラブラブでもいいよぉー」
落書き？だかを楽しそうにする二人にもう着いて行けずに
近くのベンチでぐったりする
慣れない下界にくわえ、ニットのロングワンピに真っ白いコート
ミニスカにニーソにロングブーツ
そして髪をかざるふわふわの飾り
普段腰を縛る服が多いのでこれだけは!!と頼み込んで着けてもらった飾り目的の豪奢なベルト
下界遊び慣れた二人にコーディネートされた服装は着ているだけで疲れた
それに足がスースーして気持ち悪い
露出してる部分を隠そうとニットをぐいぐい引っ張っていると不意に黒い影に覆われた
きょとりとしながら上を見上げるとそこには人間の雄が三人、私を取り囲むように立っていて
「お嬢ちゃん可愛いーね!!ねぇ一人なら俺らと遊ばねぇ？」
「うわ、目でけぇし睫毛ばしばし！すっぴんでこれは犯罪ものの可愛さだろう」
「てか外国人なの？日本語わかるー？やべぇ超かわいー」
「……」
だれ、これ
きょとりとしてるといつの間にか行くことになっていて腕を掴まれて無理矢理引きづられた
どうしよう、噛んだり引き裂いたりしたらダメだよね。人間はか弱いから
「私、友達と来てて……」
「うわ、声までかわいー！」
「なにこのかわいー子は」
ぐいっと肩を抱かれて顔を近付けられて間近から覗きこまれる
ついイラっとして眉間に皺が寄るが彼等はかわいー！を連呼するばかりで解放してくれない
むしろボディタッチはどんどん酷くなり肩を抱かれて、顔を近付けられて覗き込まれ眉間に皺が寄る
それでも彼等はかわいー！を連呼して私を連れ出そうとするだけだった
「あの、私友達のところにもど「利虎」」
ふわり、と
急に横から延びてきた手に絡めとられて抱き締められた
この声、このぬくもり、この安心感
この、込み上げる愛しさ
私が間違える筈がない
「來兎様っ」
へにゃりと顔が崩れてる自覚があったがそれすらも気にならない。もう來兎様しか見えない
愛しい彼にしっかりと抱きついた
ってか、洋服姿の來兎様
すっごくかっこいい。かっこいい。かっこいい。
どうしよう、かっこいい
ノンフレームの眼鏡が似合いすぎててうっとりとする。とりあえずかっこいい。なのに可愛い
どうしよう、どうしよう
洋服の來兎様に夢中な私は、背後の人間達なんてすっかり忘れていた
「おい！お前なんだよ!?」
「この状態でわかりませんか？彼女の恋人ですが」
「なにふざけたこと言っ、な、なんだよお前等!?」
「邪魔」
「うぜぇから消えろ、ガキが」
耳に馴染みのある声と珍しい声に反応して振り向くとそこには龍哉と牛若さんが居て
逃げ去る人間と入れ違いに巳乃さんと未明さんがこちらに来るのが見えた
「りこりん心配したんだからねぇ!?」
「そうですよ！慌てて龍哉に連絡しちゃいましたよ!!」
「……ごめんなさい」
來兎様が手を離すと今度は二人にぎゅーと抱き締められて
半泣きな二人を私からもぎゅーっと抱き返した
「それにしたって助けに来るのが早すぎじゃ無いですか？」
「過保護二人。めんどくさい」
「ちょっと龍哉！私たちをつけてたの!?」
「わかちゃんも着いて来てくれたのぉ!!ありがとうわかちゃん、帰ったらめーが美味しい葉っぱあげるからね!!」
「ん」
「お前等を放流するとあぶねぇだろうが。人間が」
「利虎殿、利虎殿」
「はい……來兎様かっこいい…」
「ありがとうございます。利虎殿も愛らしいですよ？もしよかったらデート、しませんか？」
「………」
來兎様とデート
今すぐ帰って洋服姿の來兎様を堪能する
ま、迷う！
真剣に迷ってるとクスリと笑った彼に抱き締められて
『帰ってからもすぐには脱ぎませんから、デートしましょう？』
耳元で低く囁かれて、兎に惚れ込んでる虎は大喜びで手を広げる兎に抱きついた
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