雪辱と屈辱


「で、どういう事かな」

「こういう事だ」

ベッドに散らばっている長い金糸を持った紅い瞳は、普段の温厚さを隠し目の前、否、真上の相手に威嚇をこめた視線を投げ掛けるも、その先の本人は涼しげにその視線を鼻で笑う。

世宇子の寮、サッカー部のキャプテンの部屋。
深夜というには遅すぎて朝方というには早いこの時間、絶対に無い筈の来訪者にアフロディこと照美は、自分に覆い被さった影にも気付かず、服の中に忍び寄ってきた手が胸のそれを摘み上げた衝撃で漸く意識を覚醒させた。

照美は元々そんなに熟睡するタイプではない。
侵入者があれば直ぐに目を覚ますだろうに、全く気付かせずこの眼前の人物はのしかかるにまで至ったのだ。侮れない。

更に気付けば両手を拘束されていて、挙げ句押さえ付けられているようだ。
縛るものなんかあっただろうかとまだ半分動いていない頭を回転させてみれば成程、佐久間の右目を覆っている筈の眼帯が行方知れずになっている。
恐らくそれが今照美の手首を戒めているのだろう。

見たことのない僅かに光沢が違う佐久間の双眼を見つめると、中性的な体型に加え女顔な相手はより女性に近くなっていて、変に緊張して照美は心が強張るのを感じた。

「女みたいだね…男を押し倒すより押し倒される方が似合ってるよ、君」

「俺より女顔が言ってんな」

組み伏しても尚強気そうな照美に苛立ち摘んだままの突起を捻り上げてやると、僅かに甘い吐息が微かな声と共に漏れる。
それに気を良くしたのか佐久間の口元が弧を描き、照美の首筋に顔を埋めた。
佐久間の舌が這い回る奇妙な感覚に照美は眉を顰めた。

「…っ何でこんな事を、」

「ただの復讐だ」

綺麗に吊り上がった口元をそのままに、悪魔のような彼は優しく微笑んだ。






<雪辱が果たせぬなら>
  <せめて一生止まぬ屈辱を>
    <お前も俺もずっと救われない>





end

→小説TOPへ→TOPへ


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -