れもん100%様投稿文
腹部に一発。
お前はいつもそうやって俺に微笑みかける。
「なんだよ‥」
『可哀相な奴だよな、お前も』
「何‥がっ‥‥」
グイッと髪を掴まれお互いに向き合う体制へと施される。
正直変な気持ちだ。いくら強くなった俺がいたとしても、結局は同じ佐久間次郎。
自分に追い詰められてるだなんて目の前の俺を見ても信じられない。
『鬼道に捨てられて‥、悔しかったか?』
「鬼道‥?それはもう終わった事だ。」
『お前には鬼道が必要か?』
「お前も‥俺なら分かるだろ」
何故お前はそんな事を聞いてくる?
お前も俺、佐久間次郎であるからには必ずと言って良いほどあの人は必要不可欠な存在だ。
サッカーとしてでも、人としてでも‥。
『鬼道なんかいらねぇよ。この俺達を置いて行ったんだぜ?』
「それは‥!」
『俺達ならあいつ無しでも十分な力を持っているはずだ。あいつがいなくても‥』
「‥‥‥」
こいつは何が言いたいんだ。
途切れた言葉の続きを耳に留めるべく、彼の方へと目線を送った。
すると両端の口角を上げてお前は笑う。
『だから‥俺はお前だけいればいい』
髪を掴んでいた手が離れゆっくりと音もしないくらいに抱き寄せられた。
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その日の俺は何かが違かった。
一瞬だけ、鬼道じゃなくてこいつといれば良いのじゃないかと思ってしまった俺の頬には、小さな水の粒が流れていた。
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