E 'stato un amore può essere bella.



「はぁ〜るこちゃん」

 廊下から覗いてにこにこと笑う男に晴子はこんにちはと答えた。

「名前君、どうしたの?」
「これから道達の練習見に行くんだ。晴子ちゃんもどうかと思って」

 名前が花道達の練習を見ることを誘いに来るのは今日が初めてではない。綾子曰く似てない兄弟でダブルスでも組んだら面白そうね、なんて言われる位には赤木と晴子共に知り合いになっている。

「ちょっと待ってね、今支度しちゃう」
「うん、いつまででも待ってるよ〜。晴子ちゃんいるとオレも道も嬉しいからさあ」

 ルールよく分からないから練習みても何してるか分からないんだよね。そういう名前に晴子は笑う。
 花道も名前もバスケットの覚えがいい。花道は肉体的に、名前は理論的に学ぶ。飲み込みが早い生徒を持つことに晴子はある種快感を覚えていた。
 鞄に教科書などを積め、名前に声をかけた。名前と晴子は並んで体育館へと向かう。

「そういやあさ、何で花道の髪の毛が赤いか晴子ちゃんは知ってる?」
「いいえ? どうして?」

 そう聞けば待ってましたとばかりににへらと顔を崩し笑う名前に、晴子は胸がほんわかした。名前の花道好きが分かる顔だ。
 弟の事を誇らしく思う時によくする表情で、花道のバスケットの練習や試合をみている時だったり、花道が褒められた時に自分のことの様に喜ぶこの表情が晴子は好きだった。
 よく花道と名前は似てないと言われるが、柔らかく笑みを向けた表情は酷く似ていた。双子というのも頷ける。

「中学の時のオレと花道ってそっくりだったんだよねえ」
「今でも二人は似ているわ」
「ううん、今はさあ、花道の方ががたいもいいし、バスケやり出してから筋肉増えたみたいで結構見た目違うんだよねえ。昔は後ろ姿なんて鏡に映ってるのかっていう位そっくりだったんだよ」

 良くそっくりすぎて見た目を分かりやすく変えたいという双子の話を聞くが、花道もそれだったのだろうか。と晴子は考えたがどうもしっくりこなかった。

「そんでね、ある日頭真っ赤っかに染めて道が帰ってきたんだよ。顔に殴られた跡もあってさあ、ボロボロの格好だし、頭真っ赤になってるし、オレびっくりしちゃって。どうしたんだ! って聞いても答え無くってさあ。普段のアイツって殴られたりしないわけよ。こりゃ、喧嘩した時大人数に囲まれてやられたんだって思ったね。何回も聞いても答え無くって、晩飯の時にやっと一言こう言ったわけ。名前に間違われると困るから染めた。って口の端きれて、しゃべるのも辛い中でそう言うのよ。オレの安全の為に真っ赤にしてさあ、その後髪の毛染めて先生の風あたり強くなるし、余計不良に絡まれたり。それでもオレが黒にしたら? って言っても赤のまんまなんだよね。ことごとく名前に間違われたら困るからって言うんだよ」

 昔を思い出しているのか、名前の目元が優しさで一杯になる。

「桜木君、お兄さん思いだったのね」
「うん、ほんと道はさあ、オレと違って綺麗なんだ。優しさで一杯で憧れるよ」

 名前が立ち止まり、晴子に向き合う形になる。

「晴子ちゃんが花道の良さを知ってくれる人で良かった」

 バスケットに誘ってくれたのが晴子ちゃんで良かった。と名前は続けた。晴子は何だか照れてしまって上手く言葉を紡げなかった。
 まっすぐ名前の瞳が晴子を射抜く。普段、へらりと笑う名前であったが時折真面目な顔をして見据える姿はバスケットをしている花道と被る。

「こ、こちらこそ、桜木君がバスケット部に入ってくれて嬉しいわ」

 えへへと笑う名前に晴子もつられて微笑んだ。



それはこの上なく美しい恋でした



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