01.覚えのない場所



 気付いたら異世界プラス未知の領域でした。

「どこなんだ? ここは……」

 辺りを見渡すが木、木、木!!
 三つ揃えば森だ!!

 嫌な気配もするし、第一オレの格好は部屋着だ。
 ガンガン暖房器具を使って薄着でぬくぬくしていたのに早朝の森におっぽりだされては寒いの一言に尽きる。

「っかしーな。なんで深夜から早朝なんかに? そして森?」


 そう。オレは明日仕事がオフだった事もあって深夜番組を堪能している最中だったのだ。
 いつの間にかうとうとして朝に…というのはわかるが頂けないのはこの場所のせいだろう。
 オレには夢遊癖なんてなかったはずだが状況から考えるとそれか、さらわれたかのどちらかだ。

「っ!」

 いいい、痛い!

 裸足で森を歩いてるのだから仕方ないが小枝が足の裏に刺さった。
 情けない事にオレはこういった事が苦手だ。
 怖くて足の裏を見れない。
 大の大人がと言われるが怖いものは怖いし苦手な物は苦手だ。
 だが刺さったままというのは痛い。
 これからも歩かなくてはならない状況で刺さりっぱなしは泣きたい。

 とりあえずしゃがみ胡座をあく。
 見る勇気はもちろんまだない。

 あぁダメだ。
 怖くて見れない。

 以前シャーペンの芯が手にぶっすりと刺さった事があったがアレは見ずに弟にとってもらった。
 兄貴は女々しすぎだ。なんて言われたが苦手な物は苦手だ。
 よく友人が小学校で名札を使い己の指に指して遊んでいたがアレはトラウマ以外の何者でもない。
 表面の薄皮に刺しているのはわかるがどうにも直視出来ない。
 思い出すだけで痛そうだ。

 なんというか、例えるなら足の小指をぶつけちゃいました☆なんて事を聞いた時に似ている。

 はぁ……とオレは溜め息をついた。
 勇気をだせ。オレ。抜かないと歩けないぞ。


 がさがさがさ。

 びくりと体が反応する。

 先ほどからしていた嫌な気配の持ち主だろうか。
 森といったら熊が最強のように思われるが……まさかな。
 どうも、この森は怪しい雰囲気が漂っている。
 霧がかっているし、富士の樹海に似た感じだ。行った事ないけど。
 イメージ的に。

 がさがさという音が段々こちらに近づいてくる。

 パキ……。
 音を立てた主が枝を踏んだようだ。

 少し身構える。
 戦闘経験なんて無い。熊が出たら死んだふりとはよく言った物だが、あれは信用できない。
 ぶっちゃけ、食われるのがオチだ。
 だから身構える。動かなくても睨んで対時していれば少しはましだろう。
 犬なんかは睨みをきかせ、視線をそらした方が負けという事になるらしいが、熊にきくのだろうか。
 ああ、しまった。熊じゃなくて猪だったらどうしよう。
 やつらは直線型で突っ込んでくるタイプだ。睨みはきかないとなると横によけるしかないだろうが、背を向けて逃げるには向いてない。
 難しいな。

「あれ? お姉さんここで何をしてるの?」

 聞こえてきた声は俺の予想をいい意味で裏切ってくれた。
 どこか甲高い声は少年の独特のソレであり、人なつっこさを感じさせるモノであった。
 だが、お姉さんというのは誰の事だろうか。
 きょろきょろと辺りを見渡すがそれらしい人物はいない。

「お姉さん?」

 ふと、言葉にした声が意外にも高い事が分かる。
 これは、自分がだしたものだが…。

「うん。散歩でもしてたの。ここ結構危険なんだよ」

 いや、それはオレが聞きたいじゃなくて。

「少年。ここって一体どこなんだね?」

 ああ、やはり声が高い。
 風邪……ではないよな。

「ここ? くじら島だよ」

 聞いた事のない島だ。日本にそんな島はあっただろうか。

「ねえ、お姉さん。どうしたの」

 無言で俯いていると少年が心配そうに話しかけてきてくれた。

「ああ、いや、なんでもない。で、ところでオレはお姉さんじゃなくてだな」
「ん。ああ、そっか。オレ、オレはねゴン・フリークス」

 ああ、誤解してる。君のお姉さんじゃないとかそういった事か。
 オレは見た目の事を言っているんだが。

「よろしく、ゴン君。で、オレが言いたいのはだな。オレは女じゃなくて……」

 と、そこでやっとオレはオレの身体に起こった違和感に気づいた。
 こう、胸をなで下ろしたときにだな。
 あったんだよ!
 筋肉かとも、思ったがそんなマッチョに一晩でなった記憶はない。
 ふにっと柔らかいモノである以上筋肉というより、脂肪の塊と言った方が……。

 思わず、がばっとズボンの中に手を突っ込んでみる。
 そこには、オレの息子、分身とも言える大事なモノが消えていた。

「ななななななあ、ない! オレの大事なもんがない!」
「え? ど、どうしたの」

 そこで、オレははたっと気づいた。
 先ほどからこの少年、いや、ゴン君がお姉さんと呼んでいたのはこういう理由だったのかと。

「ち、ちち、ち@こがなくなってる。おお、おれの……オレの物が……」

 いや、下品だとかそういった事は言わないでほしい。
 二十六年間愛用(……ごほん)していたモノがいきなりなくなったのだ。

「えーっと、お姉さんは女の人だからないんじゃないかな」

 気まずそうに言うゴン君。

「オレは男だったんだ!」

 もう、涙が出そうです。

「よく、わからないけどさ、とりあえずオレの家きなよ」

 その後よく話しを聞いてみたらオレのいた世界じゃない事がわかった。
 で、性別まで変わって、見た目。
 いや、これは、どうなんだ? 顔とかそこらへんは同じだが視界がどうも低い。
 その上、二十六歳の顔付きではないだろ。これは。
 女性の顔付きなんてある年齢越せば同じだが明らかに違う気がする。

 ゴン君に借りた洗面台で頭をかかえた。




 ああ、何でこんな事になっちゃったんだ。



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