01. Because it keeps the house



 い、いかん。白目向いてなかったか?
 こんなに連続プレイなんかしたことなかったからな。学校へも行かず幻想水滸伝?Xをプレイ中。もう廃人だ。廃人。
 こんなん母さんにしれたらぶっ殺される。あー考えるだけで恐ろしい。
 一人暮らしをして早2年。大学は雨が降ったら休む、これ基本。
 ゲーム発売日から数日休む、これも基本。
 落とした単位は数知れず。
 だってよー。気になるじゃねえか。一回目のプレイでは108人集められなかったんだよ。クソ、俺の馬鹿野郎。
まさかあそこで仲間にしなきゃいけないなんて思わないだろうが。
あー疲れた。流石に座りっぱなしで尻が痛くなってきた。

目をパチパチとし、遠くを見る。天井を向いてやれば肩も凝っているらしく、首を回した。
ぼきぼきとなる音が気持ちよい。
腕をまっすぐ前に伸ばし手首も回転させる。指先にも力を入れワザと音を鳴らすようにした。
 体の柔軟を少々やると、少し緊張がぬけたのか欠伸がでた。
 時計を見やれば深夜とも明け方とも言える時間。

 あーまた飯食い忘れた。

そんな風に意識すると急に腹が減ってくる。心なしか胃が活動を開始した気もしてきた。
立ち上がり、冷蔵庫の中を覗く。
1DKである、俺の下宿先は二歩も歩かないうちに冷蔵庫へと手が伸ばせるのだ。時折この狭さに泣きそうになることもある。

「……なんもねえ」

 ああ、悲しきかな一人暮らし。そりゃ数日閉じこもっていれば何も無くなるわな。
 かと言ってコンビニまで出かけるのも面倒くさい。
 そして何より俺が臭い。……ような気もする。
 明日は出かけるか。と今は涙をのんで腹に物を収める事を諦める。
 せめて風呂にでも入って血流を良くしてこの肩こりから逃れるか。流石に3日目は汚いしな。俺ルール的に3日は駄目だ。アウト。むりむり。
 部屋の中で全裸となり、部屋に干してあったタオルを手に取る。微妙に湿っていた。
 別のタオルにしようかとも思ったが、どうせ拭いて濡れるんだ。気にする事はない。

「さっぱりしてー。ちょいとまたやってー、明日の飯マックー」

 どうでもいい独り言を呟きながらドアに手をかけた。

「きゃー」

 え?何これ。
 目の前に女体というか、いや、なんというか。何とも言えないが裸のお姉さんというか。
 ここ俺の家だよな。
 
後ろを振り返ると俺の部屋では無く、広々とした脱衣所。

ええ?なにこれ。

目をこする、頬をつねる。けれどもよく見た俺の部屋にはならなかった。
寝ぼけてどこかの銭湯にいって、しかも女湯に入ろうとしてた?病気か。
 っていうか、それよりも!
 
 慌てて手に掴んでいたタオルを腰にまく。そんなブラブラさせておけるはずもない。

「貴方、ここに何をしに来たんですか!」
 
 可愛い顔の女の子が湯船に浸かりながら怒声をあげる。
 他に湯に浸かっていた女の子、女の人も俺が入って来たことで体を隠そうと湯につかる。
 
 うほ、ちらりと見える肌の色がたま……とか言ってる場合じゃない。
「誤解です、誤解。あんまりに眠かったみたいで、俺間違えちゃって……し、しつれいしましたー!」
「お待ちなさい!覗き行為を清々堂々とやるだなんて…「ホントすみません。マジ知らないうちにここにいただけですから、許してください」

 まさかの覗きというか、何というか、そんな行為をしてしまったために捕まるのでしょうか。謝って許しては貰えないだろうな。
 っていうか、何でこんなとこにいるんだよ。ねーよ。
 に、逃げるしかない……。
 
「あ、あはははは」

 顔に笑みを浮かべたまま後ずさる。
 引き戸を閉めようと腕を上げたときだ。バタバタとした足音がこちらに近づいてくるのが分かった。

「王子〜そっちは女湯なんで〜」
「その女湯から悲鳴が聞こえてるんだよ!」
「も、もしやサイアリーズ様や、リオンちゃんや、ビッキーちゃんや、ランちゃんがああああああ、こうしちゃいられないですよー」

 ひいいい。何これ、くるの?!ここに、来ちゃうの?!
 っていうか、あれ?よく知った名前が。
 目の前にいる女体……もとい女性を見ると、ああ、そうかもしれない。なんて悠長におもったりして。

「ってな場合じゃねえ」
 
どどどどうしよう。とにかく逃げ道だ。にげみ…

うろうろとしていたら足下にあった何かを踏んでしまい俺は盛大にこけてしまった。
何もかもがスローモーションでみえる。
天井が遠くなると同時に頭から地面へこんにちは。
目の前が真っ白になった。

「う、…あ…」

 い、いててて。左手で頭をなでてやる。
 うっすらと目をあけていけば、俺の家の天井。

 がばりと身を起こすと誰もいない。というか、いるはずがない。
 それが当たり前なんだ。だってドアをあけたらトイレと風呂が一体になってる場所なんだ。あんな豪華なわけがない。
 床が凄く冷たいし、ここは寒い。あんなにほかほかした湯気で満たされていたらどんなにいいか。
 あ、あんなに女体が…いや、何でもない。
 寝ぼけて転んだんだろ。ゲームのキャラが風呂入ってるとか、俺は病気か。ゲームのやりすぎだ。そうにちがいない。流石にあれに性欲の対象としてみているわけもない。
 現実の女が好きなんだ。

「もう寝よう」

 意味不明な考えになっている事もあってか、シャワーをすましたら寝ることを決めた。
 それから学校にも行こう。
 家に引きこもっているからこんな事になるんだ。うん。そうだ。



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