多分君と同じ気持ち
なんだなんだ、どうしてこうなった?意味がわからない…なんで目の前に一番ありえない顔があってありえない距離で俺を見つめているんだ?誰か教えてくれ。おいそこの眼鏡ガッパ、笑ってないでなんとかしろ。


「ねぇ?君達さ、見てないで助けてくれない?俺もう限界なんだけど…精神的に。」
「いやいや、私達の目の前で繰り広げられているこれはまさに奇奇怪怪。しかしこれは君の自業自得だと僕は思うんだけど、門田君はどう思う?」

「……俺にフルな…」


ドタチンはそう言ってげんなりとした表情でグラスを口に運び助けを求める俺から視線を反らす。あーあ…ドタチンだけは助けてくれると思ってたのに…意外と薄情だなぁ。

「臨也」

顎を掴まれ無理矢理、ドタチンと新羅に向いていた顔を目の前に戻される。近い近い!つーか酒臭い!

「結婚してくれ。」
「うん、いい加減にしてくんない?静ちゃんさぁ、それさっきから俺に何回言った?数えてみろよ!今のでついに23回!俺達の年齢にたどり着いちゃったよ!年の数だけ言えば俺が首を縦に振るとでも?!ないない…絶っっ対無いから!!これは君のためなんだよ?!後悔するのは静ちゃんだからね?!」


俺は今、目の前のこの怪力馬鹿に壁まで追い詰められ、顔の両脇に手を置かれ…うんまあ簡単に言うと、逃げられない状態である。
さらにこの現状を説明すると、今日は4人で飲もうという話しになったのが5時間前である。俺が提案すると新羅も乗り気になり、ドタチンと静ちゃんに連絡を入れてくれた。臨也ぁぁぁああ!!といういつもの怒声と共に俺の家のある新宿に池袋から走ってきた怪物をなんとかドタチンと新羅が宥め、酒を飲み始めたのだった。
ここからだ−−−
静ちゃんが酒を苦手にしているのは知っていた。何てったって俺は無敵で素敵な情報屋さん…というより、高校時代からの付き合いである。知ってて当然だ。そんなわけで、静ちゃんは酒を飲むことを断固と拒否していた。「えぇ?静ちゃん飲めないの?ダサッ」そう口走ったこの時の俺を殴り飛ばしたい。この言葉が静ちゃんの何かに火を付けてしまった。静ちゃんは酒瓶を掴んだと思うとあろうことか、そのまま口まで持っていったのである。所謂ラッパ飲み。そんな訳で、静ちゃんは俺達の残りの酒を一人でほとんど片付けてしまった。俺とドタチンと新羅であるだけ持ち合った酒だ。かなりの量があったのに、今はほとんどが静ちゃんの体内。

「一旦落ち着こう?ね、静ちゃん。」
「うるせぇ黙れ結婚しろ。」

おかしい3点セットをならべてくるこのやり取りもいい加減飽き飽きしてくる。本当にもう止めてくれ。

「確かに新羅の言う通り自業自得だ。だから誰かあの時の俺を連れて来てくれない?」

「どうやら臨也もいろいろ限界みたいだね。俺はどうしたら良いかわからないよ門田君。」
「だから俺にフルなって。俺だってどうすれば良いかわからねーよ。」
「たまに静雄と飲む私や門田君から言わせてもらえば、そうなった静雄はもう寝るまで止まらないよ。そんな訳だから静雄の体力が眠気に負けるまでの我慢だ臨也。」

「化け物じみた体力を持つこの男がそんな簡単に負けるわけないだろこのヤブ医者」

ヤブ医者じゃなくて闇医者だよという新羅のツッコミなんてもはやどうでもいい。さっきから好きだ好きだと呪いのように呟いてくるこの男をどうにかしなければならない。

「静ちゃん、君は今酔ってるんだ。静ちゃんが今愛の告白をしているのは誰かもう一度考えて?君が嫌いで嫌いで仕方ないウザいウザいノミ蟲だよ?」
「あ、自分で言っちゃうんだ。」
「黙れ眼鏡。だからさぁ静ちゃん、そういうこと言うのは酔いが醒めて冷静になってか…」

俺の台詞が途切れた。いや、切られた。今、今何が起きた?静ちゃんが俺にきっききき…

「好きだ。世界で唯一俺の心の一番深いところに居るお前が…いつもいつも俺の頭の中から消えてくれない。世界で一番嫌いだけど、世界で一番好きなんだよ!」


何それ、意味わかんない…矛盾してるよ静ちゃん。いつもならそう笑ってからかえるはずなのに、今日の俺はどうやらおかしいらしい。どこかのネジが吹っ飛んでしまったのだろうか。
静ちゃんからのキスにこの愛の告白でどんどん顔が熱くなる。
ドタチンは俺達を見て、さっきまで持っていたグラスを床に落として放心してるし、新羅もぽかんと俺達を見つめている。

「し、静ちゃ…」

ゴトンと俺の肩に落ちてきた温もりによって、またも俺の言葉は途中で切られてしまった。俺の肩に頭乗せてスースーと寝息をたてているコイツは、目を覚ましたら全て忘れてしまっているのだろう。


そのことに少し寂しさを覚えた俺は−−





多分君と同じ気持ち







後日、俺は知らん顔をしていたのに、新羅が静ちゃんに酔っていた時の事を教えてしまい、静ちゃんが自宅に閉じこもり、俺が新羅にナイフを突き付けて、セルティが訳もわかがわからずドタチンを呼び助けを求め、ドタチンが盛大に溜息をついたのは、また別の話しである。





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念願の来神組が書けました!現在深夜1時なのでところどころ文がおかしいですがそれは今に始まったことじゃない←←

本当は波江さんとかも登場させたかったし、セルティだってもっと出したかった。

因みに新羅の四字熟語はすごく自信が無い。使い方間違ってるかも……(おい)




8/14−蒼空


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