8年分の『おめでとう』を君に
「せんぱーい。ちゃんと掃除してくださいよー。」

「何で、王子が掃除なんてしなきゃならないんだよ。掃除は召し使いカエルの仕事なんだよ。」

「ミーはカエルじゃありませんしー。なんでそんな馬鹿なんですかー堕王子は」ヒュッ グサッ


「・・・・・・・痛ッ」

フランが語尾を伸ばす前にナイフが風を切って飛んでくる。

ここはヴァリアーが食事をしたり、会議をしたりする部屋で、広く、長いテーブルが中心に置いてあり、必要以上の椅子がずらりと並べてある。

いつもは、この部屋はそんなに汚れる事はないのだが(XANXASがワイングラスや料理をスクアーロに投げ付けた時以外)、今日は、沢山の色とりどりの紙吹雪が床に落ちていた。

それをさっきからフランがほうきで掃いていた。

「おい、カエル。まだこっち紙吹雪残ってっぞ。」
紙吹雪が溜まっているところを足で蹴り上げれば紙吹雪が中を舞った。

「・・・そこに、集めてたんですよー・・・。」

はぁ、と溜息をつくフランを見てしししっと笑うベル。

「あーもーやってらんねー。」

ポイッとほうきを床に投げ出し、床に座っているベルの隣に腰を降ろす。

「おい、お前がやんなきゃ、誰がやるんだよ。早くやんなきゃスクアーロ先輩に怒られんだよ。」

「その時は王子(仮)先輩がサボってた事チクりますからいいんですー。」

「カッチーン。お前、王子に喧嘩売ってる?」

ナイフをずらりと出し怒りマークを出しながら笑うベル。

「その、『カッチーン』とか口で言うの恥ずかしくないんですかーいい年しt・・・グサッ・・・・痛ッ。いい加減ナイフ投げるの止めて下さーい。」







ベルとフランが喧嘩していると、部屋の外からドスドスと大袈裟な足音が近づいてきた。



「ゔぉぉぉおおおおい!!!!ベル!!!フラン!!!片付けは終わったかぁ!!!!?」


バーン!!とドアを乱暴に開けて、スクアーロが部屋に入ってきた。

「・・・・」

その部屋は綺麗に片付いており、中には誰もいない。

しかしスクアーロはただ一点を睨みつけ、動こうとはしなかった。

「いい加減にしろぉ・・・」

そう一言言うと、ひゅっと剣を振るった。



すると部屋が歪み、霧のような粒子が流れ、下から本当の部屋が現れた。

そして、スクアーロが剣を降ろした、ほんの数センチ隣に、フランとベルも、床に座ったままの状態で現れた。


「あーあ、見つかったじゃねーかよ。このカエル。」
「突然だったんだから、幻術が不完全だったんですよー。むしろ、短時間でここまでの幻術を作り上げたミーを褒めてほしいですー。」

「誰が褒めるかよ。ばーか。」

「てめぇらぁぁぁあああ!!喧嘩してねーでさっさと部屋片付けろ゙ぉぉぉおおお!!!!」


げんこつを一発ずつくらった二人は、渋々掃除を再開させた。



「あのースクアーロ隊長ー、一つ質問なんですけどー。」

「何だぁ。」

「何で毎年毎年、ボスの誕生日祝うんですかー?嫌がるって分かってるのにー」

「しししっ、確かに。今日も紙吹雪で向かえてやったら、椅子投げまくって寝室に帰ってったし「あいつは、」」

「「?」」

今まで黙っていたスクアーロが重く口を開いた。

「あいつは18年前、クーデターを起こしてから8年、凍らされたまま、誕生日を向かえたんだぁ。だから8年分、祝ってやりてーんだぁ・・・。」


XANXASは、クーデターを起こす前、毎年\代目に誕生日を祝ってもらっていたという。

まだ、XANXASが真実を知らなかった時、

自分が\代目の息子だと、信じきっていた時、


しかしその時は、真実を知った日に呆気なく終わりを告げた。




****


XANXASは自分の部屋で、ベッドに横になっていた。

「・・・・」


あぁ、イライラする・・・。
カスの考えてる事はだいたい分かっている。
何故、毎年こんなくだらない事を繰り返すかも・・・。



(おめでとうXANXAS・・・)

そう言って、\代目はXANXASの頭を撫でた。

今考えると虫ずが走る・・・。

朝起きると、部屋はプレゼントで溢れていた。
毎年、それが当たり前だった。

自分にそこまでする\代目に少し呆れたが、プレゼントはちゃんと受け取っていたし、それを喜ぶ\代目に対して、イライラしたりもしなかった。


しかし、自分の父親じゃないと知った時から怒りが沸き上がった。


そしてクーデターを起こし、凍らされてしまった。


しばらく経って、意識が戻った時、目の前にはスクアーロの顔があった。
凍らされてどれだけ経ったかは分からなかったが、スクアーロの髪がかなり伸びていたので、かなりの年月が経ったのだと実感できた。


あれからまた、10年経った。

朝、いつものように遅く起き、朝食を食べに行くと、上から紙吹雪が舞った。

そして派手な音で、クラッカーがなった。

誕生日など、自分でも忘れていた。しかし、毎年必ず幹部達は、XANXASの誕生日をこのように祝うのだ。

そしてXANXASも毎年、スクアーロや幹部に、近くにあった椅子を投げ付けて部屋に戻るのだった。




****


「でもー、ボスも怒って帰っちゃうし、一生懸命作った紙吹雪も喜ばれることなくただのゴミになるなら、ミーはやりたくありませーん。」

「王子もー。」

「ゔぉぉぉい・・・」
そう言ってベルとフランが愚痴を吐く。

それに唸るスクアーロの声を聞き、また急いで紙吹雪を集め始めた。


「そんな事ないわよ〜。」

と、いつ入ってきたのか、ルッスーリアが話しに入ってきた。

「いつから居たんだよ。変態オカマ。」

「ボスはあれでも喜んでるのよ〜。」

「無視かよ。」
無視されむすっとするベル。

「あれで喜んでるんですかー?そのグラサンかち割りますよー?」

「もうっ!フランちゃんったら、可愛い顔してそんな事言わないの!!
まぁ、そんな事だから、自信持ちなさいよ、スクアーロ。」


「俺は別に・・・///」

「んもうっ!!素直になりなさいよね。はい、これ。」
「なんだぁ・・・」

ルッスーリアに渡されたのは、朝食の残りだった。残りといっても、誕生日パーティーの為に用意されたものだったため、見た目はまだ豪華さを保っていた。

「ボス今日朝食食べ損ねたのよ。きっとお腹空かせてるわ!さぁ、早く行ってやんなさい!!」

さぁさぁと言って、スクアーロの背中を押して、部屋から追い出す。










「多分、これが一番のプレゼントだと思うわ〜。」

「わざと行かせたんですねー。鬼ですー。」

「スクアーロ先輩、明日の任務は全部パスだな、立てなくなってるぜ。多分。ししっ♪」









End




XANXAS様!!
お誕生日、
おめでとうございます!!!!!!(ヴァリアー下っ端s+レヴィ+蒼空より、心を込めて)


今回レヴィを出せませんでした。

残念・・・


このあとスクアーロがどうなったかは言わずもがな・・・・。



本当にEnd。



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