白衣は防寒具
「キャプテーン!!」
いつものようにシャチがローを見付けて手を大きく振って現れた。
「うぜェ」
そんな言葉とは裏腹に、ローはニヤリと笑う。
「キャプテンはこれから講義ですか?」
ペンギンが静かな声を出す。
「あァ。居室にこれを取りにな」
ローは分厚い教科書を掲げる。
「医学部は大変っすね!」
シャチが感心したように頷く。
「まァ、お前には無理だろうな」
「はい!」
ローの言葉にシャチは素直に頷いた。
「お前らは?」
「俺達はこれから実験棟に。卒研まで間もないですからね」
ペンギンがため息をつきながら言う。
そして、チラリとそちらを見る。
「あ」
「あ!おーい!○○!!!」
実験棟から出てきた女子学生を見付けてシャチが大きく手を振る。
「あ!シャチ君!ペンギン君!これから研究室?」
呼ばれた○○が小走りに近付いて来る。
「おう!」
シャチが笑いながら頷いた。
「お前、また終夜か?」
ペンギンが隈の出来た目元を見ながら言う。
「うん!今回は上手く行ってるよ!」
○○は嬉しそうにピースサインをペンギンに向ける。
「白衣着たままどこ行くんだよ?」
シャチが不思議そうに聞く。
「ん?顕微鏡室寒くて、防寒具代わりに着てたんだー。お腹減ったから生協に行ってくる」
○○はポケットからお財布を出して笑う。
「確かに白衣は防寒具だな」
今まで黙って見ていたローが○○の白衣を見て頷いた。
「ん?うん!だよね?顕微鏡室ってさ、寒くて!えっと?」
○○はローを一瞬不思議そうに見たが、すぐに笑顔で対応する。
「ローだ。トラファルガー・ロー。こいつらとは高校からの仲だ」
ローはシャチとペンギンを指差す。
「そうなんだ!私は□□○○!シャチ君とペンギン君と同じ研究室!宜しくね?トラガルファー君!」
○○はにこりと笑う。
「………………トラファルガー」
ローは間違えを正す。
「え?トラガルファー?」
「トラファルガー」
○○は混乱仕切った頭で声を出す。
「さすが○○!!終夜何日目だ?」
「と、言うか、キャプテンがそれに律儀に付き合ってる」
シャチは○○に驚き、ペンギンはローに驚く。
「…………ローで良い」
ローは諦めた様に笑う。
「ロー君!宜しくね?」
○○は申し訳なさそうに笑った。
「き、キャプテンが名前を許した!!」
シャチは眉間にシワを寄せて驚く。
「あァ、しかも女子にな」
ペンギンも眉間にシワを寄せて驚く。
「で?生協に何を買いに行く気だ」
「え?何か適当に」
ローの質問に○○は不思議そうに答える。
「インスタントは止めておけ、塩分も多い。終夜明けなら学食でちゃんと摂取方が良い」
「そっか」
「今ならまだ空いてるからすぐに食えるだろ。行くぞ」
ローが学食へと長い足を向ける。
「へ?」
「来ないのか?」
「あ!行く!」
ローの背を○○が追う。
2人は学食棟へと消えて行った。
「……キャプテン惚れたな、アレ」
シャチがぽつりと呟く。
「どこにそんな要素が?」
ペンギンは不思議そうに呟く。
「アレじゃねェか?」
白衣は防寒具「やっぱりキャプテンは変わってる」
「そこが良いんだろ?」
「確かに!」
***
Happy birthday Low!!!
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