聖なる夜は一緒に

「○○さんは!やっぱり夫婦でクリスマス?」

同僚が楽しそうに聞いてくる。

「……そ、そうだね!」

私は何とか笑顔を保ったまま頷いた。

「だよね!まだ結婚3年目だもんね!新婚さんだよねー!良いなぁ!!!」

同僚はそれだけ言うと喫煙席へと足を運んだ。


今日はクリスマス。冬のお祭りの1つだ。私は別にクリスチャンではないから、ミサなどには行かない。

「……はぁ……」

結婚3年目。確かに新婚だ。私だってまだまだラブラブしていたいよ!

名だたるライバル達を撃ち落としようやく結婚できたのに、

…………出来たのに!!!!







「ただいまー……」

帰った家は真っ暗。いつもの事だ。
仕事で疲れた体に鞭打って夕飯の支度。合間に干しておいた服をたたみ、その合間に掃除をする。


ーーピピピピピ


そして、メール。

そこにはいつもの通り『飲んで帰る!』とご機嫌なメール。


お決まり。いつも。例え今日がクリスマスでも。



そしてこの後は大体酔っ払った旦那様を優秀なお友達に連れて帰って来て貰うだけ。
デロンデロン。会話になんかならない。




例え今日がクリスマスでも!!!




「あー!止めた!止め!!」

私は畳んでいた洗濯物を放り出すと、今日の為に買っておいたシャンパンを取り出した。
もちろん!この日の為に買っておいた特別な物!

「ふっふー!サーモンのマリネにローストチキン!クラッカーにはキャビアを乗せてーっと!出来た!!」

ダイニングテーブルの上には夫であるシャンクスと2人で良いムードが出るように用意した豪華なディナーとシャンパン!

「うふふ!そんで、CDをかけてー!完璧!!!」

スピーカーからはクリスマスソングが流れる。

「HAPPY!X'mas!!」

私はそう叫びながらシャンパンの蓋を飛ばした。

「うわー!綺麗な色!うん!美味しい!!」

シャンパンは私の好みの味で渇いた喉を潤した。

「サーモン美味しい!!キャビア!!贅沢だぁ!!」

私は一人のクリスマスを満喫した。









「うひーっく!!呑みすぎた……」

シャンクスはいつものように近くまでルゥに送って貰い、酔っ払ったまま家へと帰って来た。

「うー、気持ち悪……。早く寝るか」

シャンクスは結婚とはどう言うモノかが解っていなかった。

○○と結婚していても遊び歩くのは当たり前で、主に大好きなお酒を仲間で飲んでいた。
最初の内はベックマンやヤソップも怒っていたが、何故怒るのかが解らなかったし、○○も何も言わないと言ったら呆れながら黙っていた。

なので、この3年間。特に○○とどこかに出掛けた事もなければ、ベッド以外で過ごした事もなかった。

これからもそれで良いと思っていた。




「ただいまー。……?」

いつもなら飛んでくる○○の姿はなく、仕方無く鞄をその辺に置くと、コートや防寒具も廊下へ放り投げながらリビングへと続く道を歩いた。

「○○?どーしたー?」

リビングから流れるクリスマスソング。テーブルの上には○○一人では食べきれないクリスマスディナー。たたみかけの洗濯物は散らかり、シャンクスは何だろう?と赤い髪をかいた。

「うーん、むにゃ」

「お、いた」

ソファーの上には○○がシャンパンの空瓶を抱えながら寝ていた。

「おーい、ただいまー」

シャンクスは熟睡している○○の頬をツンツンと突っつきながら声をかける。

「うーん」

○○はそれが不快だった様に手で払い除けた。

「ったく、風呂にでも入るか」

シャンクスは仕方無く風呂場へと足を運んだ。






風呂に入って酔いがましになった所でシャンクスは缶ビールを開けた。

「んー!旨っ!!」

風呂上がりの一杯は格別だとシャンクスは○○の眠るソファーへと近付いた。

「ん?嫌な夢でも見てるのか?」

シャンクスが覗き込むと○○は涙を流していた。シャンクスはそれに特に気にする様子はない。

「……さみ、しい……よー……」

途切れ途切れの寝言は確かに『寂しい』と聞こえた。

「何がそんなに寂しいんだ?」

シャンクスは○○の頭を撫でると不思議そうに眠る○○に聞いた。

「だって、……新婚、なのに…………ひとり……。せっかくの、クリスマスも、ひとり……」

○○は起きた訳ではないが、しっかりとした声を出した。

「お前もどこかに遊びに行けば良いだろ?」

シャンクスは不思議そうに提案する。

「…………」

「○○?」

「わたしは、他の誰かじゃなくて…………シャンクスといたい。…………せっかく、結婚した、のに」

○○は険しい表情になると、そのまままた涙を流し始めた。

シャンクスは驚いた。まさか○○が自分と過ごしたいと思っているとは夢にも思わなかったのだ。

「……参ったな」

シャンクスはどうしたものかと頭をガシガシとかいた。








「……ん……?!」

○○は目を覚ますとベッドの中にいた。
そして、目の前にはシャンクスの寝顔。
驚いた○○の動きでシャンクスが目を覚ました。

「えっと……あの?」

「うん?」

「どうしたの?」

「いーや、別に何も」

○○は不思議そうにシャンクスを見る。
朝起きてシャンクスと○○がベッドで抱き合う様に寝ていた事などなかった。
しかも、○○は昨日の服のまま。シャンパンを開けてそのまま風呂にも入らずねてしまったようだ。シャンクスもパジャマの乱れはない。

「……するの?」

「……いや、今日はこのままで良い」

シャンクスはそう言うと○○を抱き寄せた。

「……無理しなくて良いよ」

「無理なんて」

「してるじゃない」

「……良いんだよ!こうしてるだけで暖かいだろ!」

シャンクスは照れを隠すために○○の首筋に顔を埋めた。

「うん、……そうだね」

○○もシャンクスを抱き返した。









聖なる夜は一緒に








次の日。



「うー!呑みすぎた……!!!」

「……はぁ、結局こうなる……」

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