成長の証
「……ん?あれ?」
○○は冬島に来たので、厚手のシャツに袖を通し、胸元のボタンを付けようとした。
「なっ……キツ……」
何とかボタンを付け終わる。ズボンも心なしかキツい。
鏡を見ると、おかしくはないが少しキツそうに見えた。
「おかしいな?この前までは普通に着れたのに……。袖も丈も短くない……まさか!!」
○○は恐る恐るお腹の肉を触る。
「太った?」
○○はショックを受けた顔をした。
「おい!○○!!皿の飯が減ってないぞ!!」
コックが○○の皿に乗った肉を見る。
「どうした?腹でも痛いのか?」
隣で食べていたバギーが○○を覗き込む。
「うー、そうじゃないけど……」
○○は鳴りそうになる腹を押さえ付けてため息をついた。
「何だよ?要らねェなら俺食うぞ!」
シャンクスがひょいっと干し肉をっ見上げる。
「良いよ。ちょっと食欲無いんだ」
「へ?」
殴られると身構えたシャンクスだったが、○○はそれだけ言うと食堂から出て行った。
「どうしたんだ?」
「派手に知らねェ」
シャンクスとバギーは不思議そうに首をかしげた。
「ありゃ、恋煩いだな!!」
ギャバンがニヤニヤと笑った。
「恋煩いぃ?!!!」
バギーは思い切り意外そうな声を出した。
「って事はとうとう俺の思いが叶うのかァァァ!!!!!」
シャンクスは両手を天高く突き上げて叫んだ。
「いや、あの調子じゃお前じゃねェな」
ギャバンは急に真面目な顔で言う。
「え?」
シャンクスは驚きに固まる。
「じゃあ…………まさか!!!」
「俺か?いやー!参ったな!ハッハッハー!!!」
突然現れたロジャーが照れながら高笑いをする。
「ほほぅ、何か心当たりでもあるのか?ロジャー」
レイリーが呆れた顔で聞いた。
「いやー!最近○○の蹴り
喰らうと胸の奥が疼く」
「それはただの病気だ、クロッカス。ロジャーはもうダメだ」
ロジャーの嬉々とした声にレイリーは冷たく船医を呼ぶ。
「そうじゃない!」
「そうか、ならあの島には行かなくて良いな?ルージュが悲しむだろうが、仕方がない」
「すみませんでした!!!!」
レイリーの残念そうな声色にロジャーが90°に腰を曲げた。
「なら、くだらない事を言ってないで仕事をしろ」
「イエッサー!!!!」
ビシッッと敬礼をするとロジャーは走って船室へ消えて行った。
「で?どうした?」
レイリーがシャンクスとバギーに向き直る。
「はっ!!そうだ!○○が飯を食ってないんだ」
尊敬する船長と副船長のコントに固まっていたシャンクスがレイリーの問いに意識を戻した。
「飯を?」
レイリーが肉の残った皿を見た。
「それにシャンクスが肉を取っても怒らなかったんっすよ!」
バギーはシャンクスを指差しながら言う。
「……そうか。わかった。俺からそれとなく聞いてみよう」
「「お願いします!!」」
シャンクスとバギーはレイリーに揃って頭を下げた。
「はぁ……お腹減ったなぁ」
○○は腹の虫が鳴くのを押さえ付けた。
「それに、苦しい!取っちゃえ!」
○○はシャツのボタンを外した。
「ふはー……楽だ……。やっぱり太ったのかな……」
○○はしょぼんと項垂れた。
ーーコンコン
『いるか?俺だ』
「レイリーさん?」
○○の不思議そうな声にレイリーはドアを開ける。
「っ!!ま、待っ!!」
慌てる○○の声を聞きながらもレイリーはドアを開けた。
「……着替え中か、すまない」
レイリーは○○の格好にすぐにドアから出て行こうとする。
「ま、待って下さい!!!」
○○は慌てて服を着直すとレイリーを呼び止めた。
「どうした?」
レイリーは冷静なまま部屋へと入るとドアを閉めた。
「あの、れ、レイリーさんから見て、私変わりました?」
○○は恥じらいながらレイリーに聞く。
「は?」
「だ、だから!私太りましたか?!!」
○○は顔を真っ赤にして叫んだ。
「…………そうでもないが」
レイリーは○○を頭の先から足の先まで見てから言う。
「嘘です!だって……」
もごもごと語尾が聞き取り辛い。
「なんだ?」
レイリーは静かに聞き返す。
「…………」
○○は顔を真っ赤にして俯く。
「ハッキリと言ってみろ」
レイリーが辛抱強く聞く。
「ーーー!!!だ、だから!胸とお尻がキツくて辛いんです!!!」
○○は湯気が出そうな程真っ赤になりながら叫んだ。
「…………」
レイリーは呆気に取られ、押し黙る。
「手も足も最近は背も延びて無いのに、胸とお尻だけがキツくて……。お腹は毎日鍛えてるから大丈夫なんですが、胸が!」
○○は恥ずかしさから早口で捲し立てた。
「そ、そうか。……次の島に行ったら新しい服を買うと良い」
レイリーは軽く頭を押さえながら部屋を出て行こうとする。
「っ!!!レイリーさん!私は真面目に悩んでるんです!!」
○○は真面目な顔でレイリーにすがり付く。
「大丈夫だ。それは成長の証だ。服を変えればすむ事だ」
レイリーは○○に背を向けたまま言葉を重ねる。
「どうしたら良いですか?ご飯食べなくちゃお腹は減るし、毎日筋トレもしてるのに!!」
○○は必死にレイリーに答えを聞こうと捲し立てる。
「それは!」
ーーバン!!!
レイリーが口を開くと○○の部屋の扉が突然開いた。
「筋トレするな!固くなる!!」
そこにはロジャーとシャンクスが仁王立ちをしていた。
「なんだ!○○!胸デカクなったのか!!心配したよ!!!」
シャンクスもロジャーに続き嬉しそうな顔をした。
「へ?」
「……」
○○は不思議そうな顔をして、レイリーは手で顔を覆った。
「女はやっぱり胸がでかくなるんだな!」
シャンクスの言葉に○○は漸く自分が太った訳ではなく、胸が膨らんだのだと理解した。
「これだからガキは!尻のでかい女の方が魅力的だ!!」
ロジャーは拳を握って力説した。
「…………変態だ!!」
○○は顔を赤くして自分の姿を布団を引き寄せて隠した。
「何を言う?!そこでしれっとすましてるレイリーは太もも好きなんだぞ!!!」
ロジャーがびしっとレイリーを指差した。
「……」
恐る恐る○○はレイリーを見る。
「……まァ……」
レイリーは視線を外すと頷いた。
「っ!!!!出て行けー!!!この変態どもー!!!!」
○○はまとめて3人を蹴り飛ばした。
成長の証「レイリーさんまで!」
「レイリーさんは若い子大好きだぞー!」
「黙れ!変態船長!!!」
「そうだ、俺は仲間にまで手は出さん」
「副船長カッコイイ!!」
「そう思うなら見習いなさい!シャンクス!!」
「○○!俺はお前が貧乳でも巨乳でも好きだぞー!」
「うるさい!!この変態シャンクス!!!」
「ぐはっ!!!」
「……やれやれ」
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