熱中症にはご用心
それはそれは暑い日。
世の中の児童、生徒、学生は夏休みの時。
働く社会人には関係はない。ただ、暑いだけの日。
「こんにちはー」
やっとの事で冷房のある所まで来て○○はようやくホッと一息ついた。
「お!○○か!お疲れさん!ちょうど今最後の患者が終わったら診察室に行け」
受付のヤソップにそう言われると○○は「失礼します」と笑顔で勝手知ったる診察室への道を歩く。
小さな個人医院は2つの診察室にレントゲン室。待ち合い室も小さめ。
(何か、趣味でやってるような病院よね。金払いは良いから儲かってるのかな?)
○○はくすりと笑いながら第1診察室へ入った。
「シャンクス先生こんにちはー!っ!!!」
○○は軽くノックをして診察室に入る。
そこにはだらしなくネクタイを外して前を肌けさせたシャンクスが椅子に座り、その膝の上に美しい看護婦が垂れかかっている姿だった。
○○は余りにも官能的な2人にしばし呆然と立ち尽くした。
「あ!○○?!今日木曜か?!」
シャンクスが出入り口に立つ○○に気付いて「ヤベェ!!」と慌てて美人看護婦を押し退けた。
「っ!!!し、失礼しました!!!」
○○は顔を真っ赤にして慌てて扉の外に出て乱暴に扉を閉めた。
(うわー!うわー!うわー!)
○○は扉にもたれ掛かって顔を押さえて座り込んだ。
憧れのシャンクス先生が綺麗な女性と妖しい雰囲気を出しているのを見て、不覚にもドキドキとした。
ーーガチャッ
「きゃぁっ!」
「あら、ごめんなさいね」
扉が開き、そのまま後ろから転けて背中を床に付き寝っ転がった。
美人看護婦はにこりと妖艶に微笑み「それでは、お疲れ様でした」と手を振るとそこから去って行った。
「…………」
○○は何とか体を起こして地べたに座ったまま美人看護婦の背を呆然と見送った。
「ほら、いつまでそこにいる気だ?」
シャンクスが○○のすぐ後ろに立ち、腕を引き立ち上がらせた。
「っ!!!す、スミマセン!お楽しみの所お邪魔して!!」
○○は顔を真っ赤にしたままシャンクスから少し離れ頭を下げた。
「お楽しみのって!違うぞ?シてねェよ?!」
シャンクスは慌てて○○の言葉を否定する。
「…………そんなに必死に否定すると逆に怪しいです」
○○は顔を赤くしたままシャンクスから視線を反らせた。
「いや!だから!……ん?」
シャンクスは一歩○○に近付く。
「大丈夫か?」
「な、何がですか?」
シャンクスの真剣な声に○○は不思議そうにシャンクスを見上げる。
「高いな」
シャンクスは○○の頬を包むように触り、首の後ろとおでこを触る。
「ほら、これ入れろ」
シャンクスは体温計を○○に渡し、診察ベッドに座らせた。
「ちょ!シャンクス先生私は今日は診察じゃなくて、新薬のご案内に!」
「はいはい、後でな」
○○が慌てて言うのをシャンクスは子供をあやすようにたしなめた。
「ほら、捲れ」
シャンクスは聴診器を構えた。
「い、嫌です!どこも調子悪くないです!」
○○はふるふると首を左右に振る。
「往生際の悪ィ」
シャンクスは○○のワイシャツをスカートから出した。
「きゃー!ちょっ!止めましょう!」
○○はシャンクスの手を掴んで止めた。
「この、医者嫌いめ」
シャンクスは唇を付き出して○○を見る。
「こ、心の準備と言うか、なんと言うか!あ、汗臭いですし!!」
○○は困った顔をしてシャンクスを怖々見る。
「大丈夫、大丈夫!その方が興奮するから」
「意味がわかりません!!」
「うだうだ言ってるとシャツ破けるぞ」
ーー………
「軽い熱中症だ。水分取れよ」
「……はひ」
(うぅ……隅々まで見られた!穴があったら入りたい!……まぁ、綺麗なブラで良かった!!)
○○は診察ベッドの上でのたうち回った。
ーーピリリリリ
「悪ィ電話だ。はい」
泣き崩れる○○に軽く断りを入れるとシャンクスは電話に出た。
「あ?白ひげのマルコが結婚?!ヘェ!相手は?……あ?何だそれ?じゃあ堅気なのか?…………あァ?何で俺が…………ベック行けよ、俺は病院があるだろ。…………あー?あ、あァ。解った。まァ、楽しそうではあるな。はいはい、じゃあな」
シャンクスは会話を終わらせると通話を切った。
「さて、どうするかな?」
シャンクスは携帯を白衣のポケットに突っ込みながら○○へと視線を合わせた。
「お仕事ですか?なら、新薬の説明はまたにしましょうか?」
○○はスーツを着直すと立ち上がる。
「なァ、○○」
「はい?」
「珈琲好きか?」
にかりとシャンクスは笑った。
「え?好きですけど?」
○○は何だろうと振り返る。
「よし!なら喫茶店でお茶でもしながら新薬について説明して貰おうか!」
ガシッと○○の肩を掴み「逃がさない」と笑顔を見せながらシャンクスは言った。
「…………い、良いですけど?」
○○の返事にシャンクスは満足そうに頷いた。
熱中症にはご用心「よし!デートだな!」
「え?仕事ですよね?!」
「だっはっはっ!つれねェな!俺とは嫌か?」
「…………そ、そんな事ないですが?」
「なら、行くぞ!」
「はい。じゃあケーキも付けてください!」
「よし来た!」
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