彼が浮気してます。

最近、彼が浮気しているみたいです。


穏やかな午後。
少しおしゃれなカフェを見付けた。
ガーデンがとても綺麗だし、晴れていたので外のテーブル席に座り、向き合って座っているところだ。


しかし、


ずっとピコピコと携帯をいじっています。
珈琲を飲みながら片手で携帯をいじって、テーブルに置くけどすぐにブブブとバイブが…………。
さっき、ううん。この数日間それの繰り返し。
まだ、シャンクスがにやけた顔とかしてないから良いけど、怪しい。怪し過ぎる……。





「ねぇ、シャンクス」

「ん?」

「最近悩み事とかある?」

「ぶっ!!」

シャンクスが珈琲を吹き出した。
私の方まで飛んできたよ。

「な、ないない!気のせい!」

シャンクスは明らかに動揺している。なんて分かりやすい。

「そう?なら、良いけど」

私は頷いてアッサムティーを飲む。

「だろ?あ、俺トイレ」

シャンクスはそう言うと席を立った。


ーーブブブ


シャンクスがテーブルに置いていった携帯がメールの受信をバイブで知らせた。

「……」

私は出来心でそれを手に取った。

「…………?アドレス帳に登録してない?」

メールが並ぶ受信画面はほぼ、アドレスが並んでいた。名前ではなく、だ。

それを、新着メール以外を開く。

『ちょっとも会えない?』

『抜け出せない?』

『会えない?』

『寂しい』

『会いたい』

『貴方に会えないのは辛い』

『今夜行って良い?』

私は黙ってシャンクスの携帯を置いた。

そしてまたブブブと鳴った。








「はぁ」

あの後すぐに急用があると嘘を行って帰って来てしまった。


ーーチャララン


メールを知らせる受信音。
開くとシャンクスからだった。

『用事は大丈夫か?夜に行って良いか?』

私はそのメールを無視した。

怒りと言う訳でもなく、ただ、悲しかった。







チャララン

『おーい、大丈夫か?』

チャララン

『返事しろー』

チャララン

『俺何かしたか?』

チャララン

『無視は止めてくれ』

私はシャンクスから次々に来るメールを他人事の様にみていた。

『明日から出張なんだ!忙しくて……』

私は何となく嘘のメールをした。
出張なんてないし、忙しくもない。
ただ、ベッドに転がってるだけ。

ってか、最近メールすらくれなかった癖にいざ離れると惜しくなるのかしら。

チャララン

『なんだ、そうか、良かった!!俺何かしたのかと思った!気を付けて行ってこいな!』

シャンクスの笑顔が画面から見えた気がした。








1週間経つがシャンクスにあれから連絡をしていない。
シャンクスからは定期的に届いていたメールも少しずつ減った。

更に2週間が過ぎる頃にはメールもなくなった。

呆気ない自然消滅である。

シャンクスは今頃新しい彼女と仲良くしているのだろう。

……わ、私が新しい彼女だったのかもしれないけど。









「合コンいく人ー?」

「行くー!」

「私もー!」

「私、パス」

「○○は?」

同僚が私を振り返る。

「あー、じゃあ、行こうかな?」

私はにこりと笑った。

「あれ?○○さん、彼氏は?」

「シィッ!」

何か気を使われた。

「だから、私も行く」

「わかった!」

私達は仕事を早めに切り上げて合コンへ向かった。




「「「カンパーイ!」」」

久し振りのアルコールは程よく心を癒してくれた。
はっきり言ってシャンクス並みの男なんて滅多にいないから、目的は男ではなく、楽しいお酒の場だった。

「みんな彼氏いないの?本当に?」

お決まりの言葉から始まり値踏みしているのが分かる。
私は何となく話を合わせる。それだけで十分楽しかった。






「二次会行く人?」

みんな行くなか、私は一人帰る事にした。
まだ誰かと付き合う気もないからだ。



アルコールでフラフラと駅へ向かう。
うわ、混んでる。
いつもならシャンクスの家に泊めさせて貰ってたから混んでる夜中の電車は乗らなかったけど。

って、未練たらたらだなぁ。

そんな事を考えながら電車に乗ろうとしたら、後ろから人にどんどん押される。
なんだろう、気付いたらグイグイと押されて反対側のドアの方まで押しやられた。
こっち開かないんだよなぁ。
まぁ、とうぶん降りないから良いや。
お酒回って眠たいし、このままドアにもたれかかって寝ちゃおう。

しかし、混んでるなぁ。
さっきからきつい。

ん?ガラス越しに見る車内は何だかそこまで激混みじゃない、気が…………。

「っ!!」

腰を撫でられる。
うわ、これ、痴漢だ。気持ち悪い。
私は場所を変えようとする。

「…………え?」

後ろを振り返るとそこにはシャンクスがいた。

「ちょ、しゃ」

声をかけようとしたら、痴漢の手が動いた。
止めさせようと見るとその痴漢の手は何故かシャンクスから延びていた。

「な、何してるの?」

私は周りに気を使い小さな声を出した。

「お前こそ何してるんだ」

シャンクスは周りから見えないであろ場所を撫でてくる。
ちょ、恥ずかしいから止めて欲しい。

「な、なにが」

「メールは無視する、連絡はしねェ、出張だなんて嘘を言う、その上合コンだ?ふざけてんのか?」

シャンクスは無表情で声を出す。

「…………止めて」

シャンクスが咎める理由は私にある。
でも、

「そうさせたのはシャンクスでしょ?」

「何だと?」

丁度駅に着いたので私はシャンクスを無視して電車を降りた。

「待て!」

シャンクスは私を追いかけてくる。
私は無視を決め込み走る。
シャンクスも走ってくる。

駅から割りと近いアパートの2階。鍵を素早く出して玄関を開ける。

「ちょっと!手どけて!」

「そうは行くか!入れろ!」

「っ!いったっ!」

玄関の中に私ごと無理矢理入ってきた。
鍵もがしゃりと掛け、ついでとばかりにチェーンも掛ける。

「ちょっ、っ!!!」

「悪かった」

消え去りそうな声を出しながらシャンクスは私を抱き締めた。

「俺が何かしたんだろ?なら、言ってくれ。じゃないと解らない」

シャンクスはポツポツと耳元で話していく。
いつもの覇気は全くない。

「……しゃ、シャンクスは私じゃない彼女がいるんでしょ?」

「は?」

「あのね、携帯を……見ちゃって……」

シャンクスの腕の力が弱まった。私を見ている様だ。私は怖くてシャンクスの胸辺りを見た。

「それが悪い事は分かってる!最低だよね?でも、シャンクス凄い携帯してたし……不安でそしたら」

私の言葉を遮る様に私はシャンクスに腕を掴まれ居間へと連れていかれた。
危うく靴を脱ぎ損ねるところだった。

「座って。ほら」

シャンクスは私を座らせると自分の携帯を取り出した。

「な、なに?」

私は困惑気味に携帯とシャンクスを見比べる。

「お前に対してやましい事は1つもない」

ずいっとシャンクスが出してくるのでそれを受け取る。

もしかして、証拠隠滅したのかな?

そう思って受信画面を開く。
やはり、アドレス帳に登録されていないメールアドレスが並んでいた。
怖々開くと『会いたい』『声が聞きたい』と綴られている。

「よく見ろ」

私が暗い顔をしているのが分かった様で、シャンクスはメールを指差す。

「こいつさ、拒否しても拒否してもアドレス変えて送ってくるんだよ」

シャンクスも嫌そうに顔を歪めた。
確かによく見るとアドレスのドットがひとつずつ増えてる様だ。

「え?それって……迷惑メールってより、ストーカー?」

私は驚いて声を潜めた。

「たぶんな。今のところ変な被害は出てないし、○○にも被害が出てねェから放っておいたが」

シャンクスはひとつため息をもらした。

「なのに、まさかこれのせいで浮気を疑われるとかな」

「……」

私はシャンクスの携帯メールを見た。

『会いたい』『何で無視するの?』『私は2番目でも良いのに』

「…………シャンクス」

「ん?」

私はシャンクスをジッと見た。

「私はシャンクスの一番なんて嫌。2番、3番がいるのが許せなくなる。シャンクスの心がはなれたら私きっとこの人よりも酷くなる。だから、それが嫌なら今でも良いからわか」

「俺にはお前だけだって何度言えば信じるんだ?」

シャンクスは私を抱き締めた。耳の近くで声がする。私の好きな、シャンクスの声。

「信じてる。だから、こう言う事があったら言って。知らない女の人とシャンクスがメールしてるのも寂しい」

私は声を絞り出した。
情けない。ただの我が儘じゃない。
シャンクスだってきっと辛い思いをしていたのに私は自分の事ばかりで……。

「そうだよな。○○にしてみれば俺は他の女とばっかりメールしてたんだもんな」

シャンクスは頭をかきながら申し訳なさそうに言う。

「これからはそんな事しない。だから俺の所に帰ってきてくれないか?」

シャンクスはじっと私を真剣な目で見た。

「うん」









彼が浮気してます。








「じゃあ、久し振りに」

「ちょっ!」

ブブブ

「……」

「……電源切るか」

「ベンさんに怒られるよ?」

「だよなァ」

「アドレス変えちゃえば?」

「…………めんどくせェ」

「言ってる場合?」

ブブブ

「はァ、やるか」

「頑張って!」

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