小さな優越感

「見てみて!この前の誕生日に貰っちゃった!」

隣のデスクからそんな声が聞こえた。

「これ?」

言われた方の女性は小さく呆れた。

「可愛いでしょ?キャンディって!!」

嬉しそうに笑う彼女は可愛らしい瓶に入った色とりどりのキャンディだった。

「あんた、エースさんに誕生日かなり宣伝してたもんね」

「うん!言いまくった!」

嬉しそうに彼女は瓶に唇を落とした。

「まぁ、良かったじゃない」

言われた方の女性はすぐにパソコン画面に視線を戻した。







「別に羨ましい訳じゃないのよ!エースくん年下だし」

○○はお昼休憩に会社の近くで働く友人を呼び出していた。

「ってかさ、あんた会社に友達いないの?」

友人が少し心配そうにする。

「え?いるよ?でも、エースくんの話は出来ないし」

○○は首を振った。

「良いじゃん、告れば。いい加減良い年でしょ?」

友人は呆れながらサンドイッチを口に入れた。

「だってさー!かなり年上の女に告白されても困るでしょ?!」

○○は項垂れた。

「なら、諦めなさい」

「冷たい!あんたは良いわよね!あの縄の人と付き合って」

○○は恨めしそうに友人を見上げる。

「まーねー」

友人はくすりと笑った。

「あ!もうこんな時間!」

○○はアイスティを飲んだ。

「またね!仕事頑張って!」

「○○もねぇ!」









夕方、仕事を終わらせると残業なく○○は退社しようと階段を歩く。

「あ!いた!○○待った!」

「へ?」

何だろうと上を見上げるとエースがにかりと笑った。
驚いて立ち止まるとエースは飛ぶように降りてきた。

「もう帰るのか?」

「え?えぇ」

誰も使わない階段でエースは息を弾ませた。

「そっか、俺はまだ残業なんだ」

「そ、そうなの」

エースに少しドギマギとする。

同じ部署であり、年下ながら自分と同じ役職にある彼。
2人きりで話すのは実は初めてだったりする。

「ほい!誕生日おめでとう!」

エースはにかりと笑ってキャンディの入った可愛らしい瓶を差し出した。

「え?あ、ありがとう。…………って、なんで知ってるの?」

「良いから、良いから!」

エースは渋る○○の手に無理矢理瓶を握らせた。

「他の奴と違って一回開けてるけど気にすんな!」

「くす、食べたの?」

「おう!甘かった!」

エースはにかりと笑った。

「ちゃんと今日開けろよ!」

エースはじゃあな!と飛ぶように去って行った。

「…………ヤバイ、これは惚れる」

○○は赤くなる顔を手で覆った。







「キャンディか。寝る前嘗めたら虫歯かな?」

そう言いながらも○○は風呂に入った後、瓶を開けた。

「何が何味かな?」

○○はコロコロと瓶の中でキャンディを転がした。

「ん?なんだろ?シリカゲルかな?」

何か中に入っている事に気付いた。

「あ、綺麗」

それは薔薇の原種をモチーフにしたピアスだった。

「これはチューリップかな?」

もうひとつは可愛らしい花を型どったブローチだった。

「ふふ、嬉しい。チューリップとかエースくんも好きな花なのかな?」

○○は小さく笑った。









小さな優越感









「おはよう○○」

「あ、エースくん!これ、ありがとう!」

「付けたのか」

「ふふ、せっかく貰ったしね」

「じゃあ、」

「っ!!!」

「花言葉とか、俺が知らないとでも?」

「…………あ、え?あ?」

「宜しくな、○○!!」

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