お祭り系男子

それはゴールデンウィーク真っ只中の早朝。

休日で高校生ならまだ寝ている時間帯。


ーーぴんぽーん


「オーイ!○○ー!!」


ーーどんどんどん


ーーぴんぽーん


ーーどんどんどん


「…………っ?!」

玄関チャイムと激しいノック音。そして、少年の声に○○は慌てて目を覚ました。

「あら、ルフィ君。早いわね」

玄関へ急ぐとにこにこと笑う○○の母親。

「ルフィ?」

○○はルフィの前へ出た。

「おう!○○!これから出かけねェか?」

ルフィはにししと笑いながら言った。

「出かける?」

○○は不思議そうに聞く。

「おう!エースがさ、祭りがあるって言うんだ!!!」

「そっか、うん。良いよ」

○○がにこりと頷いた。

「そっか!じゃあ、行こう!」

ルフィが笑うと手を差し出す。

「はい、待った。○○、パジャマ」

母親が2人を止める。

「あ、あぁ!!」

○○は自分の姿を見下ろして慌てた。

「ルフィ君、○○の仕度が出来るまでお茶でもどう?この前美味しそうなハム買ったのよ」

母親がにこりとルフィを誘う。

「良いのか?!お邪魔します」

ルフィはにししと笑いながら頭を下げた。

どうやら○○の母親はルフィのファンらしい。
さらにはルフィの兄であるエースのファンでもあるようだ。





そのすきに着替えを終えた○○も食卓を囲んだ。

「ルフィ君が来てくれて助かったわ!この子、いつまでも寝てて朝ごはんが片付かなくて」

母親はクスクスと笑った。

「お、お母さん!」

○○は慌てて恥ずかしそうに母親を止める。

「そうなのか?」

ルフィはハムを頬張りながら首を傾げた。

「ね、ねぇ!もう行こうよ!」

○○はルフィを引っ張る。

「まだハムが!」

「持って行けば良いよ!」

○○は使い捨ての容器に残りのハムを入れ、ルフィに持たせた。

「お!ありがとう!ご馳走さまでした」

ルフィは○○の両親に頭を下げた。
因みに父親はそわそわと無言で新聞を読んでいた。


彼女が出来てからルフィはエースに挨拶や礼儀を教わったらしい。






「へぇ、意外とちゃんとしたお祭りなんだね」

祭りである神社にやって来た2人。

「御輿も出るって言ってた」

ルフィがキラキラと輝く御輿を指差した。

「へぇ、あ!屋台もあるよ」

「どこだ?!」

「あそこ」

興奮したルフィに○○はゆびを指して教えた。

「行こう!!」

ルフィは○○の手を握ると走り出した。

「っ!」

○○はカッと顔と握った手に熱が集まるのを感じた。





「おっちゃん!たこ焼き5個!」

「うちは8個入りだよ!」

「あ!間違えた!おっちゃん!たこ焼き5箱!」

「おう!」

そんな会話をルフィとたこ焼き屋、はっちゃんのおっちゃんとしながらルフィは楽しそうにたこ焼きを食べる。

「相変わらず良く入るね」

○○は楽しそうに笑った。

「まだ足りねェ!!!次は肉だ!!!」

ルフィはにししと笑い、最後のたこ焼きを口に入れた。

「ルフィ、射的とか出来る?」

○○は射的の屋台を指差した。

「出来ねェ!!!それはウソップの得意分野だ!」

ルフィはどん!っときっぱりと言った。

「確かに!ウソップ射的は上手いよね!」

○○はクスクスと笑った。

「あ、じゃあ金魚すくいとかは?」

「出来ねェ!!!」

「…………ダーツ」

「エースが得意だ!」

「…………そっか」

○○は少し残念そうに笑った。

「なぁ!○○!」

ルフィはにししと笑った。




ーーがらんがらんがらーん!


「大当たり!一等!!!」

ルフィが「あれなら出来る」と○○を連れてきたのはくじだった。

そして、見事に一番良いくじを当てた。

「凄い!ルフィ!!!!」

○○は驚いてルフィを見た。

「ほら、やる」

ルフィが○○に渡したのは某人気携帯用ゲーム機だった。

「え?良いの?」

○○は驚いてルフィを見上げる。

「おう!おれ持ってるからな!」

にししとルフィは頭の後ろで腕を組んだ。

「あ、ありがとうルフィ!!大切に使うね!」

○○は嬉しそうにゲーム機を抱いた。

「…………おう」

ルフィはそれから何故か不機嫌になった。






「ねぇ、ルフィどうしたの?」

またたくさん買い込み、人気の無い神社の裏側の所で2人は座り込んだ。

「……」

何故か不機嫌なルフィに○○は慌てた。
こんな事は初めで分からなかった。
いつも楽しそうに笑い、怒ってる時や疲れた時などは素直に口にするルフィが、何かを溜め込むように黙っていた。


「あ、あの、ルフィ?」

○○は恐る恐るルフィの顔を覗き込む。
ルフィがちらりと○○を見る。

「……」

ルフィはゲームを大事そうに抱えた○○からフイッと視線を外した。

「ねぇ、どうしたの?ルフィらしくなくて、私……」

○○は自分がどうしたら良いかわからずに涙が出た。

「ご、ごめんなさい。ルフィが、何で怒って、るから分からなくて!私が何かしたのはわ、かるけど」

ひっくと嗚咽を漏らす○○。

「○○!悪ィ!泣くな!」

ルフィは○○の涙にぎょっとした。

「いや、何か○○がゲームをギュッて持ってんのがさ、こう、腹ん中がもやもやして、気持ち悪ィんだ」

ルフィは自分でも訳が分からない様で麦わら帽子ごと頭をかいた。

「え?」

「○○の喜んだ顔は良いけどよ、なんか、こう」

ルフィは手をうねうねと動かした。

「…………嫉妬?ルフィが?」

○○は涙が止まった顔でキョトンとした。

「しっと?しっと……?」

ルフィはうーんと首を捻った。

「ありがとう!ルフィ!」

○○はルフィに抱き付いた。









お祭り系男子









「あ!なおった!」

「もやもやが?」

「おう!!」

「良かった!」

「にしし!じゃあ、お好み焼き食いに行こう!!」

「うん!良いよ!」







***







Happy Birthday ルフィ!!!

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