我が儘女と甘やかし男(前編)

「ねぇ、シャンクス」

「ん?」

時刻は午後10時。

「何か急に肉まんが食べたくなっちゃった」

ふかふかのソファーでこれまたふかふかのクッションを抱いた○○がテレビを見ながら呟いた。

「こりゃまた、急だな」

シャンクスは仕事を家に持ち帰っていて、資料を見ていた顔を上げて苦笑しながら○○を見た。

「急でもなんでも食べたくなったんだもん」

○○はにこりと笑った。

「相変わらずだな、○○は」

笑いながらシャンクスは眼鏡を外した。

「うん!」

○○は嬉しそうに笑った。

「そこのコンビニで良いよな?」

シャンクスは立ち上がると、薄手の黒いコートを着込む。

「えー」

「えーって」

○○の不服そうな顔にシャンクスがまたもや苦笑する。

「あれが良いな!中華街の!」

「今から行ったんじゃ間に合わねェよ」

「えー……」

「そんな寂しそうな声出すな」

シャンクスは○○の頭を優しく撫でた。

「うー、じゃあ、ジュースも。あ!紙パックは嫌」

○○は仕方なく頷いた。

「了解。じゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃい!」

○○は良い笑顔でシャンクスを送り出した。







○○は美しくスタイルも良い女だった。
我が儘で少し傲慢。
だが、男を切らせた事もなく、常に彼女をちやほやする男が周りには多かった。

そのせいで彼女は付き合ってもなかなか続かない。
彼女の我が儘に疲れ果てて別れるのだ。

シャンクスも例外ではなく、○○を散々甘やかす。
彼女は恋人同士の関係をそれで良しとしていた。
だから、別れる前に色々と我が儘を言って楽しんでいたのだ。


結局、愛など信用しない。
男は金を惜しまず、言う事も聞く。
女は体を提供する。

恋人などギブアンドテイクの存在だと思っていた。

だいたい、男は最後に選ぶのは見た目は普通。中身は大人しく慎ましく、純情な女を選ぶのだ。

○○はそれを分かっていた。

だが、今更自分の性格も変えられるず、別段困った事もない。

またコロコロと男を変えるだけだった。







「パーティー?」

○○は朝食のふわふわな限定パンを食べながら聞き返した。

「あァ。今夜ここであるんだよ」

シャンクスが渡してきた招待状を見た。

「へぇ、このホテルなら行っても良いよ?」

○○はにこりと笑った。

「じゃあ、夕方迎えに来る」

シャンクスはにこりと満足そうに笑った。

「ねぇ、シャンクス」

「なんだ?」

「せっかくのパーティーだもん。新しいドレスが欲しい」

○○はにこりと妖艶に笑った。

「この前のじゃダメなのか?」

シャンクスは不思議そうに聞く。

「もちろん、ダメ!シャンクスの隣にいるなら綺麗に見られたいじゃない?」

シャンクスの腕に自分の腕を絡ませ、胸を押し当てる。

「まァ、良いか」

シャンクスはよしよしと○○の頭を撫でた。

「本当に?ありがとう!シャンクス大好き!」

○○はシャンクスの頬にキスをする。

「ったく、ほら。これな」

シャンクスは黒いカードを渡す。

「ありがとう」

○○はそのカードにキスをした。








「お似合いです!」

「そう?」

鏡に映された○○は胸元と背中が大胆に出た、体の線をしっかりと見せる美しい赤いドレスを身に纏っていた。

それに似合うハイヒールも彼女に良く似合った。

「このドレスですとこの様なアクセサリーがお似合いですよ」

出して来たのはダイヤがふんだんに使われたネックレス。

「……要らないわ。ドレスと靴だけ頂戴」

○○はそう言うと服を着替えるためにフィッティングルームに入った。



○○は我が儘を言うが1つだけ自分にルールを決めている。

それは、男が初めて買ってくれた物はそれ以降買って貰わない事にしていた。

シャンクスにはネックレスを初めてのプレゼントで買って貰っていたので、ネックレスだけはおねだりをした事がなかった。
サプライズで買った物は別だが。

それだけは初めての男から決して変わらない1つのルールであった。

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