流される君に口付けを

赤髪会社でも新人歓迎会が開かれる事となり、新入社員ではない○○ももちろん参加する事になった。

仕事終わりの午後6時から某有名ホテルで行われる。


○○は小さな町工場出身だが、社長であるシャンクスに直に引き抜かれ(と、言うかいつの間にか町工場を止めさせられ、赤髪へと転職し)たのだ。


そんな彼女は職場友人たちとのほほんとお酒を呑み、食事を楽しんでいた。

新入社員達はそれぞれ上司や幹部、これから一緒に働く仲間の顔と名前を覚えようと必死だ。








『ビンゴゲームでーす!皆さま受付でカードを一枚ずつ貰ってますね?』

司会者のマイク越しの声でアルコールが入った者達が振り返る。

『それでは始めます!社長も参加してくださいねー!』

「おー!!酒持って来ーい!!」

司会者の声にシャンクスが酒とビンゴカードを持った右手を掲げた。

それに会場中が笑いに包まれた。

「ふふ、社長カッコイイよねー」

同僚が笑った。

「そ、そうですね」

○○は若干狼狽えながらも頷いた。

「彼女とか恋人とかいるのかな?」

同僚がシャンクスから目を離さずに言った。

「さ、さぁ」

○○は首を傾げた。




『では、次!3!!』

司会者の言葉に○○はビンゴカードの穴を開ける。

「あ……」

ビンゴカードが一列揃った。

『ビンゴいませんか?!』

司会者が言うのだが、○○は何となく恥ずかしくて言えないでいた。

「あ!○○ビンゴじゃない!すみませーん!この子ビンゴでーす!!」

同僚が○○のビンゴカードを持った手を掲げた。

『あ!はーい!こちらへどうぞ!』

拍手と共に○○は無理矢理前へと押し出される。

『おぉ!これは○○さん!おめでとうございます!!』

司会者がマイクを向ける。

『あ……ありがとう、ございます』

○○は照れながらも何とか声を出した。

『いやー!照れた顔が可愛らしいですね!!』

司会者が言うと鋭い殺気がした。

『さ、さて!ではこちらをどうぞ!』

司会者は冷や汗を滴ながら○○にプレゼントを渡した。

○○はプレゼントを受け取ると拍手に見送られそそくさと元の場所へ去った。



「ねぇ、何貰ったの?」

同僚が興味津々とプレゼントを見る。

「えっと……」

○○は言われるままプレゼントを開ける。

「…………」

○○は思いきり眉を潜めた。

「あははは!可愛い!」

同僚がケラケラと笑う。

「着てみて!着てみて!!」

同僚が楽しそうに笑う。

「え?」

「お?すげえ!着てみろよ!」

「ね?可愛いよね!」

「似合う似合う!」

「良いじゃん!」

「無礼講無礼講!」

あっと言う間に同僚達に囲まれ○○は困った様に顔を歪めた。

「う、うう……」

○○は小さく呻いた。










「わー!似合う似合う!!」

「可愛い!!」

「良いじゃん!!」

トイレで着替えさせられ、○○はミニスカートにフリフリエプロンと言う萌え系メイド服を着ていた。

「ご、ごめんなさい。これは本当は新入社員とか可愛い女の子が着るものなのに……」

○○は赤い顔で照れながら言う。

(((可愛い……)))

近くにいる男性社員はおろか、女性社員までもがきゅんと胸が高鳴っていた。

「○○ちゃん!○○ちゃん!俺にお酌して!」

「お、俺も俺も!!」

「で、出来たら御主人様って!!」

男性社員がグラスを持って○○に次々に寄ってきた。

「…………も、申し訳ありません、御主人様。レディファーストです」

○○は照れながらもにこりと笑った。

「○○ちゃん可愛い!!」

「あーん!私から!」

女性社員達が楽しそうに○○に群がった。



○○は流されるまま着替えさせられ、流されるままお酌をして回った。





「あ!社長!」

「っ?!え?おま!」

○○がビール瓶片手にシャンクスに近付いた。

「いかがですか?」

○○がにこりと笑った瞬間シャンクスが○○の手を掴んで引っ張った。

そして会場を後にした。

「あ、あれ?○○は?」

会場を後にした2人を見て同僚が口を開いた。

「あァ……。社長が体調が悪くなってな、○○が介抱する為に出て行った」

ベックマンが呆れながらそう説明した。








「しゃ、社長?」

ホテルの一室に連れ込まれ不思議そうに○○は不思議そうにシャンクスを見上げた。

「お前……何してんだ」

怒った様な低い声がシャンクスからした。

「え?び、ビンゴゲームで当たって、それで」

「また、流されたのか」

シャンクスの呆れたため息がした。

「い、いや、あそこで断ったら雰囲気が……」

○○はしどろもどろに答えた。

「だからってな」

シャンクスは○○を掴んだただ一本の手に力が入る。

「……そうだよね。似合わないよね」

○○は悲しそうに呟いた。

「あ?」

「やっぱりこう言う格好は可愛い子がしなきゃ意味無いよね。ごめんなさい。着替えてく」

○○の言葉を遮る様にシャンクスは○○の唇を奪う。

「んっ、はぁ」

「似合うよ」

シャンクスは唇がギリギリ触れ合わない距離で口を開く。

「誰にも見せたくねェくれェにな」

シャンクスに至近距離で言われ、胸が高鳴った。









流される君に口付けを









「ところでシャンクス。社長が抜けて良いの?」

「……この体勢で聞く事じゃねェな」

「え?で、でも、新入社員さん達が……」

「新入社員なんかよりお前を抱く方が大事だよ」

「…………うぅ」

「大丈夫だ。ベックが上手くやる。な?」

「……う、うん」







***





100000hitリクエストの「泣き虫な君にハンカチを」の続編な様な違うような(笑)



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