懐かしい気持ち

「お?親父。どこに行くんだよい?」

マルコが不思議そうに出口へと向かう親父こと白髭ことエドワード・ニューゲートを見た。

「あァ、少し買い物に、な」

白髭は財布を掲げた。

「親父が買い物?!俺行こうか?」

サッチは驚いて声をあげた。

「あァん?!ガキの使いじゃねェんだ。たまには一人で行くさ」

白髭はニヤリと笑う。

「なに買うんだい?」

イゾウが煙管を吹かした。

「あァ、ヨーグルトをな」

(((また、意外な物を!!!)))

その場にいた息子たちは全員同じ事を胸中で叫んだ。

「じゃあな、俺がいねェ間しっかりやっとけよ」

白髭はニヤリと笑うと大きな体で去っていった。

「親父が買い物って珍しいね」

ハルタが白髭の背中を見て言った。

「昔は良く行ったらしいがな」

ジョズもそちらの方を見た。









スーパーでカートは押さずに買い物かごだけを持って、白髭は買い物を楽しんでいた。

「たまにはあいつらに何か作ってやるか」

白髭は魚売り場で切り身を見ていた。


ーードスン



「ん?」

何かが足に当たる感覚がして、見下ろした。

すると、子供が1人倒れていた。

「よう、坊主。何してる?」

どうやら白髭の大きな足に当たり、すっころんだらしい子供に白髭は手を貸して起き上がらせた。

「……」

子供はじっと白髭を見上げた。

「母さんはどこだ?」

白髭は喋らない子供に話しかける。

すると、右手に持っていたパックのりんごジュースを掲げた。

「っんご!!」

にこりと子供は白髭に笑いかけた。

「あァ?」

意味が分からず白髭は片眉をあげた。

「あ!もー!どこ行ってたの!離れたらダメでしょ!」

母親らしい女が焦った様子もなく現れた。

「っんご!!」

「はいはい、りんごね」

子供は白髭にしたのと同じようにパックのりんごジュースを掲げた。
それに母親らしい女は呆れながらも笑顔で答える。

「なるほど、りんごか」

白髭がつい声を出したので、母親はパッと顔をあげた。

白髭は大きな体と、決して良い人ではない顔付きだ。
大概の一般人には恐れられるのだ。

「そうなんですよ。まだまだ喋りが上手くなくて」

母親はにこりと白髭に笑いかけた。

「……そうか」

白髭は母親の態度に少し面を食らった様だった。

今時何があるか分からない。
他人に対してかなり希薄な世の中だ。

そんな中、彼女は白髭に笑顔を見せた。


ーードキリ


白髭は懐かしい感覚を思い起こさせた。

「って!ちょっと待ってよ!」

母親は走り行く子供を追いかけて行ってしまった。

白髭は2人の背を目で追った。

「…………ヨーグルトだ」

白髭は呟くと冷蔵庫の並ぶフロアへと足を運んだ。



「うむ。結構種類があるな」

白髭はヨーグルト売り場の前でじっくりと商品を選んでいた。

途中、他の客が来ては白髭を見て逃げるようにその場を離れた。

「っんご!!みあん!!」

突然した声の方を向くと先程の子供がヨーグルトのパッケージを指差していた。

「……りんごと、これはオレンジだな」

白髭がフルーツヨーグルトを見た。

「坊主、また離れたのか?」

白髭が子供の頭を大きな手で撫でた。

「いますよ」

「っ」

驚いて振り返ると先程の母親がクスリと笑った。

「ヨーグルト買う?」

母親は子供に話しかける。

「もー!もー!」

牛が描かれたヨーグルトを子供が持ち上げる。

「じゃあ、自分で持ってね」

お手伝い用の小さなかごに3連の小さなヨーグルトを入れる。

「それが旨いのか?」

白髭は子供のかごに入ったヨーグルトを見た。

「はい!美味しいですよ。でも、甘いのが苦手ならこっちの無糖。脂肪が気になるならゼロもあります。後、便秘ぎみならこれがオススメ」

母親はパパパッと説明した。

「そうか」

白髭は重々しく頷いた。

「ふふ、さっきからずっと見てたから迷ってるのかなって思いました」

クスクスと楽しそうに母親は笑った。

「……そいつは、すまねェな」

白髭はニヤリと笑った。

「あっと、それでは、また」

子供を追いかけて母親はまた行ってしまった。








懐かしい気持ち











「親父お帰り!」

「何か、上機嫌だよい」

「グラララララ!俺はまだまだ若いな」

「良い事でもあったの?」

「あ!良い女にでもあったんだろ?」

「まぁな!」

「「「っ!!どこのどいつだ」」よい」

「バカヤロー。言う訳ねェだろ!グラララララ!!!」







***






Happy Birthday オヤジ様!!!

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