君の成長を祝って
○○、シャンクス、バギーの見習いトリオが芋の皮剥きをしていた。
「ちょっと、シャンクス!ちゃんと芽は取ってよ!」
○○は手を動かしながら雑に剥かれた芋を見る。
「大丈夫だろ?」
「大丈夫じゃない!お腹壊すよ!」
「そんな柔な奴この船にいねェよ」
シャンクスは面倒臭そうにナイフを回した。
「船長やレイリーさんの口にも入るんだよ?止めてよ!」
○○はプーッと頬を膨らませた。
「なら、バギーのはどうなんだよ?」
シャンクスはバギーの芋を見る。
確かに綺麗には剥かれていない。
「バギーはまだ芽だけは取れてるよ。でも、綺麗に剥いて!」
○○は今度はバギーに言う。
「派手にめんどくせぇ!!」
バギーはムッとした。
「あ!俺良い事思い付いた!」
シャンクスがポンッと手を叩いた。
「なに?」
○○がシャンクスを振り返る。
「○○脱いで!」
「は?」
「そしたら俺達やる気でる!」
にかりとシャンクスが笑った。
「っばっっっかじゃないの?!」
「痛っ!!!」
○○は力一杯シャンクスの足を踏んだ。
「そんなんで喜ぶのはシャンクスか船長だけよ!!ねぇ?バギー!…………バギー?」
○○は怒りに任せて捲し立てる。
そして、同意を求めようとバギーを振り返る、が。
「ほら、バギーも元気になった」
「あほシャンクス!!!」
「派手に死ねェェェ!!!!」
「ぐはっ!!!」
シャンクスは両側から拳を入れられた。
「おーい!○○!!」
「あ、はい!」
先輩クルーが○○に声をかけた。
「船長がお呼びだ!甲板に来い!シャンクスとバギーももう良いぞ!」
「「「はーい」」」
何だろう?と思いながらも3人は連れ立って甲板へと向かう。
「お!来たな、○○!!こっちだ!」
ロジャーがにかりと笑いながら手招きをした。
「船長!レイリーさん!みなさんも!…………宴ですか?」
○○は甲板にクルーの殆どが集まっているのを不思議に感じた。
時刻はちょうど昼。
宴にはまだ早い。
「宴?宴になるのか?」
ロジャーはうむと考えながらレイリーを振り返る。
「違うだろ。しっかりしろ!」
レイリーは呆れながら腕組みをする。
「良いか?○○。今日は桃の節句ってやつらしい」
「もものせっく?」
聞き慣れない言葉に○○は首を傾げた。
「あァ、女の子の成長を祝う行事なんだそうだ」
「成長を、祝う?」
○○はキョトンとする。
「あァ。お前の場合は生まれた日が解らないからな。こう言う日に祝うのもありだろう」
ロジャーはうんうんと真面目な顔で頷いた。
「せ、船長……」
「つー訳でだ!今日はお前の為にご馳走も用意した!」
ロジャーが合図を送ると、コック達が料理を運んできた。
「う……わぁ……!!!」
それは見た事もない彩り豊かな料理や○○の好きなケーキも運ばれて来た。
「ちらし寿司って奴だと!船長がわざわざ俺達にレシピ渡して来てさ!」
コックが楽しそうに笑った。
「え?船長?」
「ま、まぁ、たまには良いだろ」
ロジャーは少し照れた様に頬をかいた。
○○は感動のあまり両手で顔を隠した。
「おいおい泣くなよ!」
「船長が泣かしたー!」
「ヒューヒュー」
周りのクルー達が楽しそうに囃し立てる。
「うう、嬉しいです。いつもいつもシャンクスと結託して下着を盗んだり、セクハラしてきたり、酷い時は起きたら2人が部屋に居た時は本気でどうしようかと思った時もあったけど……」
○○の言葉に周りのクルーが「うわー」と言いながらど引きをしたのが解った。
「ありがとうございます!!船長!!!」
○○はロジャーに飛び付いた。
「っと、よしよし!シャンクスとバギーにも準備が悟られない様に協力させて良かったよ」
ロジャーは○○の頭を優しく撫でると、後ろの2人を指差した。
「そうなんだ!ありがとう2人とも!」
○○はにこりと微笑んだ。
「まぁ、派手に喜べ!」
「俺の胸に飛び込んで来い!」
「嫌!!」
シャンクスはずーんと項垂れた。
「よーし!!じゃあ!野郎共!!○○の成長を祝って乾杯だ!!!!!」
「「「おぉぉぉ!!!!!」」」
ロジャーの号令にクルー全員がグラスを掲げてぶつけ合った。
「こんな幸せな事あって良いんですかね?!」
○○は嬉しそうに笑った。
「良いだろう。たまには」
レイリーがグラスを傾けた。
「出来るなら、来年もしたいです、みんなで!」
○○は純粋に言った。
「…………それは無理かも知れねェな」
ギャバンがサングラスの奥の目を悲しそうにした。
「…………そう、ですよね」
自分達は海賊だ。いつ、どんな事が起こるかわからない。
「だってよ、桃の節句は女の子の成長を祝う行事だ。お前が来年も女の子だとは限らねェだろ?」
ギャバンはニヤーと嫌な笑いをした。
「は?………………はあぁぁぁぁ?!!」
○○は嫌そうに顔を歪めた。
「ギャバンさん!俺、頑張る!!!」
シャンクスが酒瓶を掲げて宣言した。
「は?嫌ですけど!!」
○○はシャンクスにフォークを投げ付けた。
「○○ー……」
シャンクスはフォークを掴んで情けない声を出した。
「…………」
「引っ込めジジィ!!」
「っ!!!!」
そろりと近付くロジャーに冷たい鉄拳を叩き込んだ。
「「「ギャハハハハハハハハ!!!!!!」」」
「やれやれ」
クルーが馬鹿笑いする中、レイリーは1人呆れた様にため息をついた。
君の成長を祝って「○○ーー!!!好きだー!!!」
「ばっ!!そんな大声出さなくても聞こえるって!」
「照れるなよー!○○ー!!」
「うるさい!寄るな!」
「あの2人、案外早くくっ付くかもな?」
「えー」
「おい、ロジャー。お前……まさか、本気…………」
「レイリーにギャバン、なーに言ってんだよ!俺はルージュ一筋だぜ?」
「…………」
「…………」
「やめ、その目止めて。傷付く」
「お前がそんなたまか?」
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