純粋と不良

「ねっ!お願い!この通り!!」

突然●●が頭を下げてきた。

数日前に不良から助けてもらった人と付き合う事にしたと訳の解らない告白をして来た親友。

「で?何がかしら?」

○○は呆れながら親友を見た。

「あのね!シャンクスさんに会いに行きたいの!でも、一人で来るなって言うし……」

●●がもじもじと言う。

「はぁ。まぁ、親友の彼氏なら一度会ってみたかったし。そもそも会ったその日に付き合おうとか言う適当野郎の顔を見たいし。付き合ってやろうじゃないの!」

○○は美しい顔でニヤリと笑った。

「あ、ありがとう!○○大好き!」

●●が○○に抱き付く。

「なら、そのシャンクスさんとどっちが好きよ?」

維持悪く○○が聞く。

「う…………うーん」

●●が考え込む。

「あーあ、失礼ね。産まれた時から一緒にいる親友を差し置いて、男の方へ行くなんて。我が親友は冷たいわ」

○○がわざとらしくため息をついた。

「うう、そんな事ないのに……」

●●が困った顔をする。

「いいのよ、別に」

○○は寂しそうに顔を伏せた。

「あーあー!あのね!●●とシャンクスさんじゃ好きの度合いが違うって言うか、種類が違うから!比べられないよー!」

●●は慌てて言い訳をする。

「そ?……まぁ、良いわ。とにかく、行くわよ!」

○○はやれやれと立ち上がる。

「うん!!」

●●はうれしそうに後に続いた。







「………………ここ?」

○○は思いきり顔をしかめた。

「うん!ここ!」

対する●●は嬉しそうに頷いた。

「何よ、ここ」

見るからに怪しい雰囲気を出すクラブに○○は嫌そうに声を出す。

「ここにお友達と一緒にいるんだって!さ!行こう!」

●●は○○の腕を引っ張った。

ドアを開けると煩いほどの重低音。
ドンッドンッと腹に来る音が邪魔だった。

人相の悪い男達が○○達に気付いてにたりと笑った。

「よう、姉ちゃん達みたいな良い子が来る場所じゃねェよー?」

「そうだぞー」

「ギャハハハハ」

何が楽しいの男達は下品に笑った。

「あ、いた!」

●●は部屋の奥に目的の人物を見つけて走り出した。

「……っ!!●●!何してんの?!」

シャンクスは驚いてから慌てた声出す。

「えへ、来ちゃった」

●●はにこりと笑った。

「来ちゃったじゃないよ!ここは危ないから一人で来るなって言ったろ?」

シャンクスは厳しくしかりつける。

「だから、今日は親友と来たの」

ほらと○○を指差す。

「美人を連れてくるな!ますます危ないじゃねェか!!」

シャンクスは危機感のない彼女に向かい叫んだ。

(意外にまとも……?)

○○はシャンクスを観察する。

「…………シャンクスさんは、私と会いたくなかったの……?」

うるりと寂しそうに●●が声を出す。

「いや、そう言う意味じゃなくてだな……」

シャンクスが狼狽える。

「しゃ、シャンクスさんに会いたくて、私…………うー」

「な、泣くな!俺が悪かったから、な?」

●●の態度にシャンクスは慌てる。

「じゃあ、ここにいても、良い?」

●●は恐る恐るシャンクスを見上げる。

「仕方無い。今日だけだぞ!」

シャンクスは頭をかきながら頷いた。

「やった!シャンクスさん、好き!!!」

●●がシャンクスに抱き付く。

「俺もだ!!!」

シャンクスが●●を抱き止めた。

「…………バカそうだけど、●●とは気が合うみたいね」

○○はやれやれと小さく呟いた。


「な、なぁ」

「え?」

ドレッドヘアーの男が○○に話しかける。

「あんた、□□美里か?女優の?」

ドレッドヘアーの男が気になったのか聞いてきた。

「……□□美里が大学生な訳無いでしょ」

○○が美しい顔で冷たく言い放つ。

「娘か?」

後ろから来た黒髪長髪の煙草をくわえた男が聞いてきた。

「…………えぇ、そうよ」

○○は頷いた。

「気の強そうな女だな」

ドレッドヘアーの男がポツリと黒髪の男に呟いた。

「私は母と違って一般人だから、媚りつもりは無いわよ」

○○は重低音鳴り響く室内でも何を言われたのかを理解した。

「気分を害したら悪かった。俺達はただその人のファンでな」

黒髪の男が煙草を吹かした。

「俺はベン・ベックマン」

宜しくと手を出して来た。

「…………□□○○よ」

○○はその手を取らずに名乗る。

ベックマンは気にした様子なくその手を下げた。

「俺はヤソップ!いやー!でもやっぱり美人だな!美人親子!!」

ドレッドヘアーの男ーーヤソップがにかりと楽しそうに笑った。

「…………どうも」

○○は冷たく言う。

ヤソップと言う男は本当に○○の母親の大ファンらしく、熱く語っていた。

「…………●●、私先に帰るわ」

○○が楽しそうにシャンクスと話していた●●を振り返る。

「えぇ?!」

「えーっと、シャンクスさん。貴方が責任持って●●を送ってよ?」

○○がシャンクスを睨むように言う。

「もちろんだ!」

シャンクスがにかりと笑った。

「じゃあ、私はこれで」

「送るよ!」

ヤソップが一緒に歩き出そうとする。

「いえ、結構よ」

○○は美しい顔で言うと颯爽とその場から離れた。






「不良だったけど、まぁしっかりしてたかな?」

「そうだな!危ないのはお姉ちゃんか?」

ニヤニヤと笑う男達をちらりと横目でとらえ、○○はそれを無視して颯爽と歩く。

「おいおい、無視は厳しいぜ!」

「離して」

捕まれた手を見ながら冷たい声を出す。

「うお!!美人だ!」

「げーのーじんみたいじゃね?」

「…………」

○○は苛立ちながら手を振りほどいた。

「いやいや、待て待て、そんなに冷たい態度って無いよな?」

男はもう一度○○の手を掴んだ。

「っ!離しなさい!大声出すわよ?」

○○はキッと男を睨んだ。

「どうぞ?ご自由に」

男は芝居かかった声で言った。

「だれっ!!!」

叫んだ所で、後ろから口を別の男に塞がれた。

「よし!」

そのまま背中から地面に倒される。

「やった!こんな美人初めっ!!!!」

嬉しそうに下卑な笑いで○○の口を押さえていた男が言葉を切った。

いや、後頭部から何者かに思いきり蹴り倒され、地面に顔面を叩き付けられたからだ。

「っ!!ベン・ベックマン!!」

「何でテメェがここに?!」

取り巻きが蹴りを入れた本人であるベックマンに恐れた。

「俺は今気分が良い。尻尾巻いて逃げ出すんなら追わねェ」

ベックマンが静かに煙草を吹かした。

「だが、まだこの女に手ェ出すんなら、そん時は容赦しねェ」

ベックマンが煙草を手のひらで揉み消し、ニヤリと笑った。

「「「はっはい!!!!!」」」

男達は蜘蛛の子を散らす様に四方八方に逃げ出した。

「大丈夫か?」

ベックマンは手を差し出す。

「えぇ、大丈夫」

○○は一瞬迷ったが、その手を取った。

「送ろう」

「もう大丈夫よ」

「その判断は正しいが、俺がそう決めた。行くぞ」

ベックマンは○○を促して歩き出した。







「ありがとう。ここまでで良いわ」

駅に着くと○○はにこりと笑った。

「いや」

ベックマンは煙草を灰皿で揉み消した。

「さっきは助かったわ。ありがとう」

○○は礼がまだだったと頭を下げた。

「俺も下心があっての事だ」

「………………は?」

ベックマンが何を言ったのが理解するまで時間がかかった。

「俺はどうやらお前に惚れちまったらしい」

ベックマンが少しの照れもなく言葉を紡ぐ。

「………私が母に似ているからでしょ?」

○○はこの容姿には感謝しているが、今この時はそれを恨んだ。

「それは切っ掛けに過ぎないな。俺はお前の弱いくせに強がるところも好きだぜ」

ベックマンがニヤリと笑った。

「っ!!!!」

○○は顔に熱が集まるのが分かった。

ベックマンは表情を変えずに言った。

だが、この場にシャンクスが居たならば、煙草が灰になる速さで「緊張してやがる!」とからかっただろう。

「今日はこの辺にしておく。気を付けて帰れ」

ベックマンはくるりと踵を返した。








純粋と不良








「待って!」

「何だ?」

「あ、アドレス教えて」

「………」

「その、ほら!●●があのシャンクスって人に意地悪されてないか定期連絡用に!」

「………ぷ」

「な、なによ」

「素直じゃねェな」

「っ!!も、文句あるなら別に良いわよ」

「くくく、俺の敗けだ。教えてくれ」

「そうやって素直になりなさい」

(さて、どう攻略するかな)

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