バレンタインの追跡

「おはよう、○○!」

女子生徒の声にふと見るとエースの視線の先には○○の姿があった。

「おはよう。今日も寒いね」

○○はマフラーを持ち上げながら笑った。

(あァ、今日も可愛いな)

エースはそんな事を考えながらボーッと2人(と言うか○○)を見ていた。

「ねぇねぇ、持ってきた?」

女子生徒がにこにこと○○に聞く。

「うん、もちろん!持ってきたよ!」

○○はクスクスと笑う。

「私も!見て見て!じゃーん!」

女子生徒が音ともに取り出したのはプレゼントの様な包み。

「ラッピング可愛い!」

「ラッピングだけじゃないよ!ほら!」

携帯電話を見せている。

「うわ!これチョコなの?凄い!!」

○○は興奮気味に言う。

「でしょでしょ?!これで彼のハートは頂いた!!」

女子生徒はガッツポーズを決める。

「○○も頑張ってね!あ!せんぱーい!!」

女子生徒はお目当ての先輩を見付けて走り出した。

(…………チョコ?)

エースは不思議そうにする。

「あー!エース!!」

派手な美少女がエースに近寄る。

「おはよ!」

「おう」

エースは寒いので手はズボンの中へ入ったまま返事をする。

「はい!」

美少女は何やらプレゼントをエースに渡す。

「お?なんだ?」

エースは不思議そうにそれを見る。

「もー!今日はバレンタインだよ!はい!あたしから本命チョコ!」

クスクスと美少女が笑う。

「お、おう」

エースが頷くと、何処からともなく現れる女子生徒に囲まれる。

「エース君!これも!」

「エース!私も手作り!」

「私も!」

「ちょっと!押さないでよ!」

わらわらわら。

エースがチラリと○○の方に目線をやると、こちらを見ていた。
が、すぐに学校へと歩き出してしまった。







「ったく、何なんだ!ってお前もか」

エースが手に抱えきれない程の可愛らしい包みを持ち教室までやって来た。

「うるせェ」

それはそれはご機嫌ななめなローがぐったりと机に項垂れていた。
そこかしこに可愛らしい包みの山。

「おーおー、お前ら羨ましいなー」

ニヤニヤと笑いながらキッドがココアを手にやって来た。

「お前、そのココア……」

エースがキッドの飲む不似合いなココアを指差す。

「あ?これか?なんかこの前助かったからとな言って貰った」

1年の女子に。

「…………似合わねェ」

ローがポツリと呟いた。

「何がだ!」

「何もかもだ」

キッドの言葉にローがうんざりと答える。

「不良がチョコとか貰うな!」

ローが八つ当たりに叫ぶ。

「お前な、人の厚意を無駄にするな!」

キッドが叫ぶ。

「こいつ、勉強もだが律儀だよな」

エースがキッドを不思議そうにみた。

「違いない」

キッドの親友キラーが頷いた。

「…………お前もいっぱいだな」

「…………」

キラーの両手にもなかなかの包みが抱えられていた。

「そう言や○○も持ってきてるみたいだぞ」

「「は?」」

エースの言葉にローとキッドが振り返る。

「チョコ」

エースが手に持つチョコを掲げる。

「貰ったのか?」

ローがエースを睨み付ける。

「いや」

「なら、阻止だな」

キッドが頷いた。

「何を?」

エースが不思議そうにする。

「お前馬鹿か?」

「あァ?!」

キッドの言葉にエースがイラっと答える。

「○○が誰かに渡すために持ってきたんだろ。俺達にじゃなければ、誰にだ?」

ローが静かに声を出す。

「…………なら、阻止だ!」

エースがやっと意味が分かったらしく頷いた。








何事もなく放課後はやって来た。

「誰にも接触してないな」

エースが○○を見ながらこそこそと言う。

「これからだろうな」

ローもこそこそと声を出す。

「あ、動いた」

キッドが○○を目で追う。

「行くぞ」

エースの言葉に3人は動いた。








「あの!これ、いつもお世話になっているので」

○○は少し照れながら可愛らしい包みを差し出した。

「お!さんきゅー」

シャンクスがにかりと笑った。

「悪いねい」

マルコも嬉しそうに受け取った。

「奥様に宜しく」

○○はにこりと頭を下げた。

「目的はそっちかー!」

シャンクスはだっはっはっ!と笑った。

「ホワイトデー、楽しみにしとけよい」

マルコも笑いながら言った。








「シャンクスとマルコ……」

エースはこそりと様子を伺う。

「既婚者か」

ローもポツリと呟いた。

「義理ってやつか」

キッドもジロジロと見る。

3人が見ているとシャンクスがこちらを指差す。
3人は慌てて身を隠す。

「見付かった!」

エースが慌てる。

「いや、大丈夫だろ」

ローは言いながら冷や汗をかく。

「とにかくここを離れ」

「何してるの?」

「「「わっ!!!」」」

聞こえた声に3人は驚いた声を出す。

「いや、その」

「……」

「あー、なんだ」

「……」

「これは、だな」

「…………ぷっ」

3人がしどろもどろに言い訳する姿に○○は思わず吹き出した。

「「「あ?」」」

「ぷぷぷ!!3人とも変なの!あ、そうだ」

○○は嬉しそうに可愛らしい包みを3つ取り出した。

「はい!これ」

「……」

「……」

「……」

包みをガン見しながら3人の動きが止まる。

「いつもご馳走になってるから、お礼?お母さんと一緒に初めて作ったからちょっと不恰好だけど、味は美味しかったから」

○○は照れながら早口で捲し立てた。

「っ!!○○!!」

「キャッ!!」

一番先に動いたのはエースで、○○に抱きついた。

「てめェ!!」

「離れろ!」

ローとキッドが慌てて蹴りと殴りで○○からエースを引き離した。

「ありがとな!○○!!」

エースはにかりと笑った。

「さんきゅーな!」

キッドは少し照れながら言った。

「本命して受け取る」

ローが真面目くさった顔をした。

「ふふ、喜んで貰えて良かった!」

○○は満足そうに頷いた。








バレンタインの追跡








「お!不恰好!」

「だ、だから言ったよ!」

「初めてとか言ったな」

「へ?うん。バレンタイン初参加」

「お!旨い」

「良かった!」

(((可愛い)))

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