幼馴染み脱出劇
「あー!!何で彼氏出来ないのー?!」
合コン帰りの○○はポイとバッグを投げ捨てベッドに転がった。
「おい、そのまま寝たら肌荒れるぞ!」
「は?」
突然聞こえた声に驚いて○○は起き上がる。
「な、なななな!何でいるのよ!」
一人暮らしの寝室に現れたのは幼馴染みのシャンクス。
いつの季節でも麦わら帽を被っている。
「幼馴染みだからな」
にかりとシャンクスは笑った。
「答えになってない!鍵もかけてたはずなのに!」
○○は叫ぶ様に声を出す。
「あァ、鍵ね。ちゃんとかけてあったろ?中からかけた」
シャンクスはしれっと言う。
「…………もう、疲れた」
何を言っても無駄だと悟り、○○は面倒臭そうにベッドに転がった。
「何だよ?今日も成果なしか?」
ニヤニヤとシャンクスはベッドの端に座りながら言う。
「うるさいなぁ。シャンクスと違ってどうせ私はモテないですよ!!」
フンッと鼻を鳴らす。
「お前の魅力に気付く男なんざ、端から殴り倒してるからな」
シャンクスが拳を挙げる。
「……こんな馬鹿な幼馴染みがいるからね。ねぇ、シャンクス!あんたの所のベックマン君でも紹介してよ!」
「あァ?!」
○○の言葉にあからさまに不機嫌になるシャンクス。
しかし、○○は嬉しそうだ。
「ベックマン君って、彼女いるのかな?いるよねー、あそこまで男前なら」
「……」
「人相悪いけど、男前だし。その癖紳士だし!話し合うし!インテリだし!」
「……」
「ねぇねぇ!シャンクス!!お願い!紹介してよ!」
ね?と○○は可愛らしくシャンクスにおねだりする。
「………………嫌だ」
「そう言わないでさ!可愛い幼馴染みの頼みじゃん!」
「………………断る」
「あ!じゃあさ、マキノちゃんも誘ってダブルデートとか」
「………………ダメだ」
「えー?じゃあじゃあ、シャンクスの好きなケーキ焼いてあげるから!」
「………………」
「ダメ?」
「ダメ」
「何でよ!ケチー!!!」
○○はブーと膨れる。
「…………俺で良いだろ」
「へ?なに?」
小さな声のシャンクスに○○は耳を寄せる。
「だから!俺にすれば良いだろ!」
シャンクスは叫ぶ様に○○に言う。
「は?……シャンクスを?」
「うん」
「彼氏に?」
「そう」
○○の言葉にシャンクスは頷く。
「……無理」
「何で!」
「今更シャンクスにトキメかないよー!産まれた時から一緒にいるんだよ?ありえない!」
○○はケラケラと笑った。
「………………」
「え?シャンクス?」
黙ったシャンクスを不思議そうに覗き込む。
「え?何で黙るの?もしかして、マジ?」
「当たり前だろ」
○○の言葉にシャンクスは小さく頷いた。
「小さい時からお前が当たり前に隣にいて!気が付いたら好きだったんだよ!なのに、お前は……」
シャンクスはしょんぼりと項垂れた。
「うーん。そう言われても、ドキドキしないんだよねぇ。シャンクスって」
○○は困った様に笑った。
「……ドキドキさせたら良いのか?」
「うーん、まぁね」
「トキメかせたら良いんだな?」
「うん。それは、そうよね」
○○が頷いた。
「なら」
「へ?」
ガバリとシャンクスが○○をベッドに押し倒す。
○○の視界には見慣れた天井と見慣れないシャンクスの熱の籠った目。
「感じさせてやるよ」
「ちょっ!!!」
シャンクスのニヤリと笑う顔に不覚にもトキメク○○。
幼馴染み脱出劇「どうだ?トキメいたか?」
「うん。シャンクスの体に」
「っ!!!体目当ての付き合いか!!」
「うーん。シャンクスの心ねぇ」
「絶対ェ奪ってやるからな!!!」
(すでに奪われてるけど、今更恥ずかしくて言えない)
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[mokuji]
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